兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年1月25日(2027号) ピックアップニュース

談話 命守るため今こそ防衛費増でなく震災対策を
理事長  西山 裕康

2027_05.jpg 阪神・淡路大震災から28年が経過した。亡くなられた方6434人、行方不明者3人、けが人4万3792人という未曽有の大災害であった。改めて亡くなられた方のご冥福を祈り、被災された方にお見舞いを申し上げる。また、心身の傷は残されたままの方も多く、今後懸念されるアスベストによる被害など、いまだに震災の影響は続いていることも忘れてはならない。
 震災後に生まれた人は約3200万人、物心がつくまでの世代を加えると約4000万人が「大震災を知らない世代」である。この世代が当時の状況を想像するのは難しく、ましてや近畿圏外の人にそれを求めるのは無理であろう。
 一方、政府の地震調査委員会は、いわゆる「南海トラフ地震(マグニチュード8~9級)」の発生確率を「10年以内では30%程度」、「30年以内では70~80%」、「40年以内では90%程度」に引き上げている。つまり「大震災を知らない世代」は、その後の人生で、ほぼ確実に新たな「大震災」を経験することになる。
 南海トラフ地震は、死者・行方不明者数約32万人、住宅全壊戸数約239万棟と予測されている。阪神・淡路大震災、東日本大震災がそれぞれ6437人と2万2312人、約11万棟と約10万棟であり、両者と比較すると予測とはいえ驚くべき数である。台湾有事とは比べ物にならない「存立危機」と言える「有事」である。
 神戸ルミナリエも形を変え縮小された。阪神・淡路大震災を経験した私たちの役割は、毎年1月17日を大震災の記憶を風化させず後の世代に伝え、平時からの備えを見直す機会とし、少しでも犠牲を少なくすることである。と同時に、これらの活動は、個人や地域住民が自主的に行うには限界がある。国や地方自治体の責任として、被災者生活再建支援法の改正などを通じた被災者の生活保障制度の充実を行い、防災、減災の具体策と国民への啓発活動を怠らないように求め続けたい。
 震災直後の倒壊した建物、がれき、そして火災あるいは津波の中では、まずは消防、警察、そして自衛隊である。国は、国民の命と財産を守ることがその責務であり、防衛費増などではなく、震災対策にこそ注力すべきである。
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