兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年3月15日(2032号) ピックアップニュース

病院・介護施設の面会制限に関する調査結果・詳報
面会緩和 人員不足が壁に

 新型コロナウイルス感染拡大のなかでの病院や入所施設の面会をめぐり、政府が昨年11月、対面での面会を検討する方向に方針を改定したことを受け、協会は2月に病院や介護施設を対象にアンケート調査を実施。ほぼ全ての病院・介護施設で面会制限を行っており、その緩和に向けては具体的指針の策定とともに、補助金や診療報酬・介護報酬の抜本的な増額が必要であることが明らかとなった(前号既報)。調査結果の詳細を掲載する。

ほぼすべての病院・施設で面会制限
 「面会を制限していますか」との問いに、病院で100%、介護施設で99・1%が「している」と回答した。
 院内・施設内での新型コロナウイルス感染症患者の発生について、「入院患者に発生した」と回答した病院は全体の84・2%、「入所者に発生した」と回答した介護施設は全体の79・4%に上った。また、「従業員に発生した」との回答は病院、介護施設でそれぞれ86・8%、77・6%に達した。面会制限の背景には、院内・施設内での感染者発生率が高かったことがあるとうかがえる。
 面会制限の内容については、「オンラインでの面会」が病院・施設ともに50%を超えていた。また、病院では39・5%が面会を原則禁止としており(図)、時間や人数だけでなく、そもそも接触を禁止する厳しい措置をとっているところが多く、従業員や患者・入所者を感染から守ろうとする病院・施設の厳格な姿勢が明らかになった。
 ただ、家族感情への配慮などから健康状態悪化や看取りの場合、病院の73・7%、介護施設の82・2%で面会制限を緩和している。
面会制限は緩和すべきだが...
 患者・入所者、あるいはその家族との間で面会を巡ってトラブルがあったか聞いたところ、病院の約29・0%、介護施設の15・0%が「あった」と回答。
 具体的には、「感染拡大防止のために面会制限しているが、家族等から『職員からの感染もあるだろう』と言われた」「『いつまでこうした制限を続けるのか』『時間、回数を増やせないか』との声が家族等から上がっている」など、面会制限の緩和を求める家族などからのクレームがほとんどだった。
 今後の面会制限について病院の57・9%、施設の61・7%が「緩和していくべき」と回答した。
 「緩和していくべき」と回答した病院、施設にその理由を聞いたところ「面会制限によるストレスでADLの低下や認知症悪化、不穏などの悪影響が増大しているため」「内服薬による治療とワクチン接種で症状が軽減しているから」「5類に変更されると、今までと同じ制限というのは難しい。施設で感染者が発生した場合の対応も同時に緩めるべき」などの声が寄せられた。
 一方、「制限を続けるべき」と回答した病院や施設からは、「5類に変更になっても感染力に変化はなく、今まで通りの感染対応をしなければならない」「感染拡大した際、職員の負担が大きい」などの意見が上げられた。
 面会の緩和が必要だと考えてもマンパワーの不足や国や自治体による指針のあいまいさなどにより、すぐに緩和には動けない現場の苦悩が明らかとなった。
診療報酬・介護報酬 抜本的引き上げを
 面会制限緩和のために必要なことについては、「国や自治体による具体的指針の策定」が58・6%で最も多く、「補助金の増額」(46・9%)、「診療・介護報酬引き上げ」(45・5%)と続いた。「分類見直しの方針は出てきているが、高齢者施設はどうするべきか。国や県には、面会も含め具体的指針を策定願いたい」「赤字運営の改善と処遇改善が急がれます」「ただでさえ介護士不足なのに、クラスターが広がる状況なので、さらに職場環境が悪化し離職率が高まり不人気な職業になる」など具体的な意見も寄せられた。
 こうした結果を受け、協会は「社会全体を『ウィズコロナ』に向かわせながら、命と健康に直結するハイリスクグループをかかえる病院や介護施設に『ウィズコロナ』、ましてや『ゼロコロナ』を強いるべきでない」「政府や自治体は、最新の科学的根拠に基づいた、面会に関する感染対策や隔離期間等の具体的指針を早急に作成し、広く周知すべきである」等の見解をまとめた。
 引き続き、国や自治体に対し、治療やワクチン接種への公的補助の継続はもちろん、診療報酬や介護報酬の抜本的引き上げを求めていく。
〈アンケ―トの概要〉
対  象:県内病院311件、介護施設885件
有効回答:病院38件・回収率12.2%、介護施設107件・回収率12.1%
実施期間:2023年2月3日~2月13日

図 面会制限の内容【複数回答可】
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