兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年6月25日(2041号) ピックアップニュース

主張 G7広島サミット
核兵器のない世界「理想」でなく現実にしよう

 岸田首相は出身地である広島でG7サミットを開催し、あたかも核兵器廃絶の先頭に立ったかのように振舞おうとした。しかしG7首脳による核軍縮に関する声明「広島ビジョン」は、被爆者を含む多くの人々に失望を与えた。同声明は核兵器禁止条約に一言も触れておらず、ロシア・中国・北朝鮮を非難する一方で、米・英・仏の核軍縮に向けた具体案は示されなかった。核兵器禁止条約成立に大きく貢献したサーロー節子さんは「これだけしか書けないのか、死者に対する侮辱だ」と声を震わせた。
 ロシアがウクライナに侵攻する直前の2022年1月3日、核保有5大国が唐突にも〝核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない〟旨の声明を発出した。核軍縮に向けての措置についての誠実な交渉を約束する6条を含むNPTの義務を果たすとした声明はなんだったのか、核保有国は大嘘つきであることを表明したような印象である。それに追随するサミット主催国の日本政府は核兵器のない世界を「理想」にまで遠ざけ、当面は核の抑止力に頼ることを再確認した形となった。
 そもそもなぜ原爆投下という悲惨な事態が起きたのか。日本が米国に戦争をしかけ、アジアを侵略した歴史の認識と反省が日本政府に全く欠落していると言わざるを得ない。
 被爆した朝鮮半島出身者は数万人とも言われるがその実態はよく分かっていないそうだ。なぜ彼らが広島・長崎にいて被爆したのかは日本の行った植民地支配なしには語れない。
 日本が行ってきた無謀かつ残虐な戦争を正面からとらえ、できたのが、不戦の誓い、憲法9条である。しかしこの間、集団的自衛権の行使を認める安保関連法が成立し、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有も認めるようにするなど、不戦の誓いは忘れられたかのようだ。近年では南京大虐殺を南京事件と言い換え、教科書の記載が変更されるなど、史実が少しずつ変えられようとしている。
 被爆者や、戦争体験者が少なくなってきている現在においてこそ、歴史を学び、いのち、健康を守る医師・歯科医師として核廃絶、不戦のために行動することが求められる。
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