兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年11月25日(2055号) ピックアップニュース

燭心

 私事で恐縮だが初孫が生まれた。その後1年を待たずに、私の母親が亡くなり、いろいろと考える▼子が親から受けた恩恵は、同じ形で親に返せず一方通行である。時には「親にはずいぶん苦労をかけたが、何もしてあげられなかった」との後悔も耳にするが、実はそうではないらしい。誕生から成長のなかで、その表情やしぐさに癒されることは多く、日々の生活で子どもから幸せを十分に受け取っている▼子を持つと、これまでなかった負担や心配事も一気に増える▼私は開業してから、有床診療所での週2日の当直を61歳まで、日曜午前中診療を現在も続けている。当直当時にはOn dutyが週約80時間、時間外労働は年間2000時間超となり、過労死ラインをはるかに超えていた。「ライフワーク」が中心で「ワーク・ライフバランス」という言葉すらなかった。犠牲にした部分は妻が担ってくれた▼孫を育てている娘を見ると、私の妻は大変だっただろうと今さらになってつくづく思う。0歳、2歳、4歳の子どもを抱え、夫は留守が多い。日々のストレスの大きさを思いやると、感謝してもしきれない。この気持ちをどう表すか模索中だ▼世界中で数多くの子どもが餓死や戦死しており胸が痛むが、私的な願いが先に来るのはいかんともしがたい▼世界中の祖先が皆そうであったように、子や孫には事故なく、非難、疎外されることなく、やさしさとたくましさをあわせ持ち、つつましくも幸せな生活が送れることを切に願う(空)
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