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兵庫保険医新聞

2024年1月25日(2059号) ピックアップニュース

主張 政治資金規正法を考える

 昨年末から岸田政権が大きく揺れている。支持率は過去最低を更新し続けている。大きな要因は自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題だ。
 東京地検特捜部の捜査が、安倍派・二階派の両派閥の関係議員に入り、現職議員も逮捕されている。両派閥からは多数の閣僚を出していたが、多くは辞任した。松野官房長官をはじめ、どの議員もまともな説明を拒み続けたままである。閣僚を変えても、このような政権がまっとうな国政を担えるのだろうか。
 今回の捜査は、政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)の疑いが理由である。同様の事件ではこれまで多くがトカゲのしっぽ切りで終わっているが、それで終わらせてはならない。
 今回の問題で明らかになったのは、政治が莫大な献金を行う者の方だけを向いていて、国民の方を向いていないということだ。岸田首相が、政治資金規正法の改正を示唆したのは当然であるが、問題はその改正内容である。パーティー券の記載方法改善などの小手先では到底許されない。
 焦点は、企業・団体による政党への献金を認めるかどうかである。経団連の十倉雅和会長は昨年末、同団体が毎年24億円行っている自民党への献金について「社会貢献」「何が問題なのか」とコメントした。
 しかし、90年代初めのリクルート事件で未公開株譲渡による贈収賄が大問題となり、経団連は93年、「政治資金は、公的助成と個人献金で賄うことが最も望ましい」との見解を表明し、企業献金の斡旋を禁止したはずだ。そして、企業・団体献金の廃止を前提として、税金を原資とする「政党交付金」が導入された。2024年には9つの政党に総額315億円余りが交付され、自民党は約160億円をうけとっている。にもかかわらず、企業・団体献金の禁止は今日までうやむやになり、経団連は献金を再開している。
 昨年、日弁連が開いたシンポジウムの基調報告書の「社会保障は大企業中心の経済成長の障害となるとされ、社会保障の削減・同抑制策が強化された。(略)医療費抑制策も強化された。そのため新型コロナウイルス感染症の蔓延の中で多くのいのちが失われ、また多くの人が生活困窮に陥った」との指摘のように、多数の献金を行う大企業の望むように、大企業の税負担は減らされ、社会保障費は削減され続けている。
 企業・団体献金禁止の実現のため、与野党問わず真摯な取り組みを求めたい。特に野党には期待する。一時期20歳前後で増えた自民党支持率だが、今回の件で減少しているという。しかし、それが政治改善ではなく、政治不信・無関心へ進んでしまってはならない。
 国民のための政治の実現にわれわれもいま一度声を大にしよう。
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