兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年3月25日(2065号) ピックアップニュース

主張
真の医師の働き方改革のため医師の増員と診療報酬の大幅引き上げを

 厚労省の過労死等防止パンフレットには、「脳・心臓疾患発症前1カ月間に概ね100時間又は発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって1カ月当たり概ね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症の関連性が強い」とされている。
 「医師の働き方改革」により、この4月から全ての勤務医に対して原則的に適用される労働時間の上限規制のうち、A水準は、年間960時間までの時間外・休日労働が認められる。地域医療の確保で必要な場合は、B水準の年間1860時間。臨床研修医や専攻医はC水準の年間1860時間である。
 A水準でさえ平均月80時間で、過労死水準の仕事量である。厚労省は、過労死等防止を喫緊の課題としているが、勤務医は仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をとれるのだろうか。
 病院は医師の宿直が必要だ。宿直中は待ち時間も原則労働時間だが、労働基準監督署による宿日直許可があれば労働時間に含まれない。許可基準には、ほとんど労働のない勤務、夜間に十分睡眠が取り得ること、とある。宿直中に十分な睡眠が取れるとは到底思えない。
 自己研鑽を労働時間に含むかは、病院が定める。専門医資格の取得や維持の対応は、厚労省の例示では労働時間に含まれていない。病院の機能維持に必要な資格もあり、病院と勤務医との話し合いが必要だ。
 22年の文科省調査では、大学病院勤務医の3割が、24年はA水準を超える時間外労働を行うという。23年の国立大学病院長会議では、教育研修時間と医療体制はそのままで、B水準をA水準の勤務に変える試算をした。年間636万時間の時間外労働の解消が必要だった。3057人分の勤務医増員、年間129億円が必要とされていた。
 国は医療費削減のため、診療報酬を低くし医師数を制限してきた。厚労省は、医師数は充足し偏在が問題としている。21年度版のOECD(経済協力開発機構)調査では、人口1000人あたり医師数は、OECD平均で3.6人、日本は2.5人である。OECD平均では、農村部が2.9人に対して都市部は4.7人で、日本では2.3人対2.5人だ。
 医学部の卒業数は、人口10万人当たりOECD平均で13.5人だが、日本は7.1人と最下位となっている。OECD加盟国では、医師を増やしており、ポルトガル、アイルランド、オランダで2倍になり、イタリア、スペイン、アメリカは50%の増加だった。
 厚労省は、長時間労働の対策としてICTの活用やタスクシフトを提案している。タスクシフトでは看護師も業務を引き受ける対象だが、病棟で勤務する看護師は足りておらず、病床制限をしている病院もある。医療を受けることは国民の権利で、整備は国の責任である。
 真の医師の働き方改革のため、医師の増員と十分な診療報酬の引き上げを国に求めていく。
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