兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年4月15日(2067号) ピックアップニュース

診療報酬改定 インタビュー①
医科・診療所 開業医の工夫への信頼感じられない 西宮市・半田医院 半田 伸夫先生

2067_08.jpg  6月から実施される診療報酬改定で医療現場にどのような影響があるのか。インタビューをシリーズで掲載する。第1回目は西宮市・半田医院の半田伸夫先生(聞き手・編集部)。

 -今回の診療報酬改定は、全体でマイナスとなりました。
 日本で保険診療が開始された当時と現在では、家賃も物価も大きく上がり、医療技術も高度化しています。根本的に今の点数では診療が成り立たないのに、政府は枝葉末節だけを変更しています。その上、政策として方向づけたいところに評価をつけており、このやり方は問題です。
 私はまず、診療報酬は現在の日本の医療提供体制に必要な費用を計算した上で、決定されるべきと考えます。保険医協会にはこの検討をぜひ行ってほしいと思っています。
 -具体的な点数について伺います。特定疾患療養管理料の対象疾患から、糖尿病・高血圧・脂質異常症の3疾患が外され、新設された生活習慣病管理料(Ⅱ)への誘導が図られ、内科系診療所は大きなマイナスとなると予想されています。

 生活習慣病管理料では、療養計画書の作成と患者の同意が必要とされていますが、われわれ開業医は、普段から工夫して、自分でパンフレットや資料を用意し、患者さんに分かりやすいように疾患についての説明をしているのです。説明には1人あたり10分~15分はかかりますし、資料準備にはもっと時間がかかっているのに、これまで十分な評価がされてきませんでした。
 これを文書一枚で一律に管理しようとするのは本末転倒で、納得がいきません。われわれが専門家として行ってきたことへの信頼がないのだと感じます。
 当院の患者さんの平均年齢は80歳を超えています。患者さんの状態にあわせた対応があり、ご高齢等で文書を渡すのが適当でない患者さんには、生活習慣病管理料は算定しないということになるでしょう。しかし、そうなってくると経営的には苦しいところです。
 -算定には、長期処方・リフィル処方への対応の掲示が求められていますね。

 リフィル処方箋は非常に長期間、診察していない患者さんの処方に責任を持たないといけないということになります。生活習慣病管理といって文書で同意をとるなど細かい対応を求めながら、薬の処方に関しては長期診療しなくてもいいというのはおかしいでしょう。憤りを感じます。
 -ベースアップ評価料についてはいかがでしょうか。

 当クリニックは事務職員のみですので対象になりません。しかし、世間並みのベースアップは必要です。なぜ一般事務だけ外したのか、事務職員の方の仕事も評価すべきです。
 また、算定するという先生は、このために税理士や社労士に委託が必要でその分のコストがかかると聞きます。本当に全額賃上げに使えるのかと疑問です。
 -医療DX推進体制整備加算など、医療DX推進のための点数が新設されています。

 デジタル化に関しては、数十年後を見据えて、医療者側が、どのようなシステムにしたら患者の健康維持のために有意義かを考えて議論をリードしていくべきです。一部の業者の利益のためにやるのはおかしいと感じます。
 マイナンバーカードでの受診者は当クリニックで8%。これでも平均より多いようですが、本当にメリットがあれば皆使うでしょう。保険証の廃止は拙速すぎると思います。
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