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兵庫保険医新聞

2024年4月25日(2068号) ピックアップニュース

会員インタビュー 能登半島地震で口腔ケア「ふるふる隊」として活動
被災地へ自分なりの思い届けたい
加古川市・小林歯科医院 藤家 恵子先生

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輪島へ出発前に口腔ケアセット等物資を送付

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院内で患者さんへ支援物資の協力を呼びかけた

 1月に起きた能登半島地震後、口腔ケア・栄養サポートチーム「ふるふる隊」のメンバーとして、被災地をサポートする取り組みを行う加古川市・小林歯科医院の藤家恵子先生に、取り組みの内容やその思いなどを聞いた(聞き手:編集部)。

口腔ケアと栄養サポート「ふるふる隊」
 -能登半島地震後、口腔ケア・栄養サポートチーム「ふるふる隊」として、輪島市に足を運ばれていると聞きました。
 1月と2月に1回ずつ2泊3日で訪問し、輪島市で福祉避難所となっている福祉施設「ウミュードゥソラ」を拠点に、口腔ケアが必要な方がいる施設を訪れました。たった一日ではできることは限られますが、この後に引き継げることを意識しました。
 施設の入居者がみな、新型コロナに感染していた施設もありました。そのような事態も想定して持参した防護具や、断水でも使えるようにと個包装して持参したケアグッズが役に立ちました(写真①)。持ち込まない、持ち帰らないようにと消毒などを徹底し、感染対策には非常に気を遣いましたね。
 訪問前には院内でも「私が責任をもって届けます」と協力を呼びかけ、持参する歯ブラシやSPTジェルを患者さんに購入していただきました(写真②)。
 -そもそも「ふるふる隊」とはどのようなチームなのでしょうか。
 山梨市立牧丘病院の古屋聡先生が中心となって、東日本大震災後に立ち上がったチームです。古屋先生が気仙沼市内の在宅支援を進めるなかで、栄養をきちんと摂るためにまずは口腔ケアが必要という考え方から生まれました。
 東日本大震災後、何か協力できないかと思っていたところ、ときわ病院歯科口腔外科部長の足立了平先生や兵庫医科大学歯科口腔外科主任教授の岸本裕充先生に紹介いただき、私も参加させていただきました。
 私が直接足を運べる回数は限られていますので、歯科衛生士が継続的に訪問し、口腔ケアを行える体制がつくれたらと考え、歯科衛生士に呼びかけたのですが、行きたいという方は多くても皆、長期間仕事を休むことが難しく...岸本先生に全国に呼びかけていただくなどで、相模原口腔保健センターにいた須貝美和子さん、大阪にいた谷恭子さんの2人の歯科衛生士の方中心に、継続的に気仙沼の口腔ケアを担っていただきました。
 歯科衛生士の方が身一つで参加いただけるよう、私は口腔ケアの準備を行おうと考え、いろいろな企業に協力いただき、歯ブラシやオーラルケア用品などの口腔ケアグッズ、次亜塩素酸水やポータブルユニットなどを集め、段ボール15箱分以上の物資を持参し、気仙沼ボランティアセンターの医療支援物資置き場の一角に、口腔ケア物資コーナーを設置しました。
 このときの仲間が熊本地震などでも活動し、そして今回の能登につながっています。
気仙沼から能登半島へ
 -つながっている、とはどういうことでしょうか。
 このときの栄養チームの中心が、市立輪島病院栄養サポート室におられた中村悦子看護師でした。中村さんは輪島病院から「ウミュードゥソラ」に移られており、今回の地震後、福祉避難所として、被災した高齢者や障害者を受け入れ、全国から集まった医療者のコーディネートをされていました。また、大阪におられた谷さんが、石川県白山市で歯科医師のご主人とたに歯科クリニックを開業しておられました。
 -気仙沼市でともに活動された方々が、石川県におられたのですね。
 そうなんです。地震直後、彼女らから現地の状況を聞き、まずは下着や肌着がなくて寒くて困っているとのことだったので、物資を買ったり提供いただいて集め、たに歯科クリニックへ送り、輪島まで届けてもらいました。
 輪島の訪問も谷さんに同行いただき、共に口腔ケアを行っています。
 -大変寒く水もガスも止まっている中、暖かい肌着などはありがたいでしょうね。
 私も神戸市立中央市民病院歯科口腔外科で初期研修医のときに阪神・淡路大震災に遭った経験があるので、決して同じではなくとも、被災した方の気持ちがある程度はわかると思っています。
 帰る家がなくなり、水汲みに行ってお弁当をもらい、罹災証明書をもらって、そのなかで病院の再開に向けてがんばっていた...届けられたお弁当が涙が出るほどうれしかった、あの頃を思うと、言葉より私なりの行動で示すことで何か伝えられないかと思っています。
 これから、被災者が二次避難所や仮設住宅、公営住宅に移ると全く知り合いがいないということが起こり、阪神・淡路で起きた孤独死のようなことが、起きてくる可能性があると懸念しています。
 東日本被災者の方はいま、自治会の担い手がいないなど高齢化に直面していますが、能登半島被災地の高齢化はさらに深刻と感じました。
 これまでの震災の経験をふまえ、今後のことを考えたさらなる取り組みが必要になってくると思います。
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