兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年5月15日(2069号) ピックアップニュース

診療報酬改定インタビュー③ 歯科
歯科医療の充実国はもっと考えるべき
伊丹市・かわむら歯科 川村 一喜先生

2069_04.jpg  6月から実施される診療報酬改定で医療現場にどのような影響があるのか。インタビューシリーズ第3回目は伊丹市・かわむら歯科の川村一喜先生に、歯科医療機関について聞いた(聞き手・編集部)。

 -今回の診療報酬改定率は歯科で、プラス0.57%とされています。しかし、基本診療料の引き上げは初診料+3点、再診料+2点とわずかで、施設基準も大幅に変わり、複雑化しました。
 物価がこれほど高騰している中、基本診療料がほとんど引き上がらなかったのは非常に残念です。
 その上で、評価できる点もあります。施設基準に関して、歯科外来診療環境体制加算(外来環)が、歯科外来感染対策向上加算(外感染)と歯科外来診療医療安全対策加算(外安全)とに分かれました。これまで歯科衛生士がおらず外来環の届出ができなかった医療機関でも、口腔外バキュームの設置などの要件を満たせば「外感染1」の届出ができます。
 クラウン・ブリッジ維持管理料については2年間の維持管理という成功報酬の性質があり廃止してもらいたかったのですが、金属の単冠のみ部分的に成功報酬が外れる中途半端な改定となりました。
 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)は口腔管理体制強化加算(口管強)に名称変更され、訪問診療の要件が緩和され、届出がしやすくなったと感じます。
 しかし新たな研修要件を追加した上、どの歯科医療機関でも行える管理料に口管強加算を新設するなど患者さんにとってメリットを感じられない一物二価の拡大には疑問を感じます。そもそも施設基準が必要なのか見直して、低く抑えられている歯内療法や補綴関連の点数を引き上げていただきたいです。
 細かい点かもしれませんが、非経口摂取患者口腔粘膜処置(非経口処)について、わずかに経口摂取していても算定が可能となりました。医療現場の実態に基づいた改善であるように思います。
 -わずかとはいえ、歯科医療現場の声を受け、改善されたことは大きいですね。

 はい。しかし、今回の改定では、点数の細分化が非常に進みました。印象的なのが、エナメル質初期う蝕(Ce)管理とフッ化物塗布処置、口腔機能発達不全症や口腔機能低下症などの算定の仕方です。細分化し、合計するとこれまでより少しだけ点数が増えるような体系にしました。
 ところが、併算定の組み合わせが複雑で、算定漏れしないか不安です。ややこしくすることで算定しづらくし、結果的に医療費を削減しようという作戦なのかもしれない、そう勘繰らずにはいられません。
 これほど細かくややこしいと、審査側も理解できているのかと心配してしまいますが、近年はAIでの審査がほとんどだと聞きます。戦闘機でも今、生身の人間がパイロットとして乗り込むよりも、AIが操作する方が生身の人間ができないアクロバットな動きをさせられるため強いそうです。どんなに保険算定がややこしくなろうとも、AI審査は複雑なルールもクリアし、われわれ生身のパイロット(歯科医師)を苦しめる、そういう図式と想像します。
 -ベースアップ評価料についてはいかがでしょうか。

 政府が医療関係者の賃上げも図っているというポーズを見せ、自分たちに矛先が向かないようにうまいこと作ったシステムだなという印象です。
 医療機関としては、定期的に報告書を出さなければならず手間が増えます。あるいは、その部分を外注するとなると、それなりの金額を支払うこととなり、結局、診療所が負担しなければ賃上げが実現しないシステムとなっていると思います。
 -歯科訪問診療料も細分化しましたね。

 1人の場合のみ時間要件が撤廃されましたが、同一日に同一建物4人以上がごっそりと減点された印象で、このことで、当院でも年間数十万円の減収が予想されており、回復期等の病院との連携など、対応を模索中です。歯科の訪問診療を推進したいのではなかったのでしょうか、1日に4人から9人くらいの枠は引き下げを撤回してほしいです。
 医療費を目の敵にして削減し続ける方向は切り替えて、歯科医療の充実、質の向上を国はもっと考えるべきです。尼崎市・尼崎医療生協病院院長 大澤 芳清先生
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