兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年4月25日(2100号) ピックアップニュース

燭心

 第35代米大統領J・F・ケネディの「国があなたのために何ができるかではなく~」というフレーズはレトリックと認識されるが、これを詭弁と捉えるか名言とするかは意見の分かれるところである。一方、第45・47代大統領であるトランプの迷言はそのほとんどが詭弁であろう▼レトリックとは、情報を発信する側が受信側を説得させるための手法を指す。最近の日本の政治家からは名言が聞かれないが、選択的夫婦別姓に対する賛成、反対の議論で交わされたレトリックは興味深い。苫米地伸東京学芸大教授のレトリック分析によると、賛成派は議論の構造である前提、論拠、結論をすべて備えているが、反対派の議論は賛成派への反論が主で、夫婦同姓を積極的に説得する主張が少なく夫婦は同姓であるべきだという必然性が見いだせなかったという▼法務省によると、夫婦同姓を義務付けている国は把握する限り日本だけだという。2024年に国連の女性差別撤廃委員会が日本政府に選択的夫婦別姓制度の導入を勧告したことは記憶に新しい。婚姻届を出す夫婦の95%が夫の姓を選択するという状況は、世界標準からみると異常に見えるのだろう。別姓を義務付けてはいないので反対する人たちは同姓のままで問題なく過ごすことができ、別姓を望む人たちも法的に保護される。選択的夫婦別姓は両者ウィンウィンになる制度なのだ。にもかかわらず、かたくなに反対する真の理由は他にあろう。家族の絆などという詭弁はもう通用しない(九)
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