兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年4月25日(2100号) ピックアップニュース

主張 県立病院の赤字
国民の生命を守るため国の予算を使うべき

 3月24日付の神戸新聞によると、兵庫県立の全10病院が23年度、24年度と連続して赤字となる見通しであることが、県病院局への取材で分かったそうだ。
 24年度の赤字額ははりま姫路総合医療センターで25億円、尼崎総合医療センター23億円など合計129億円にも及ぶという。この赤字の補填のために県が計上した内部留保資金は枯渇して、24年度末に68億円のマイナスとなり、場合によっては国の許可を得て県の企業債を発行しなければならないという。
 民間病院の経営者からは、統廃合して新築した建設費の返済はしかたないとしても、固定資産税など免除されているにもかかわらず、経営努力が足りないなどの厳しい意見も聞かれる。
 ではその経営内容はどうなのだろうか。同じく神戸新聞によると、病床稼働率は82.1%で医業収入は2018年に比し入院・外来とも14~19%増加している。しかしながら、昨今の物価高、賃上げ要求のため、経費支出は36~59%増加したため、赤字幅が拡大したとある。
 政府はデフレでは経済は回らないため、インフレ、物価上昇をすすめ、賃金が追い付いていないとして、賃上げを奨励してきた。スーパーでのコメの価格は1.5倍から2倍になり、生鮮食料品で物価の目安となる卵の値段も1.7倍になった。大手損保会社の初任給は2倍になったという話も聞く。
 医療を支えているのはヒトであり、職員に対しての給与を上げなければ職員はとどまらない。インフレ政策下において、医療費を削減ないしは抑制する政策を続けていれば、病院の経営が成り立たないのは普通に考えてもわかる。
 現在の病院運営において、病床稼働率は最低80%を超えないと黒字にならない。一方、宿泊業界では60%が採算ラインだ。これはおかしくないだろうか。さらに病院によっては90%の稼働率を維持している場合もあるが、これでは救急患者の受け入れはできない。そのことにより、コロナ禍で受け入れ先がないと問題になったばかりでなく、季節によっては救急受け入れ不可が常態化している。その要因の一つが、診療報酬で管理された病院経営の難しさにあることは明らかである。
 本来医療はセーフティネットの根幹であり、基本的人権である健康で安全な生活を維持するため、国民から税金を徴収する代わりに、国が国民に対して保障する義務である。日本においては、国民皆保険を維持するために、高額な健康保険料を徴収している。さらに不足するのであれば、税金で補填することが必要ではないだろうか。
 医療費を論ずる場合、まず人件費、材料費、さらに技術料などの経費を明確にし、その上で経営の成り立つ医療費を計上することで、本来の医療費が求められる。
 その議論がなされない中での医療費総枠うんぬんの議論は机上の空論としか言えない。いつ起こるかもわからない有事に多額の予算をつぎ込むより、今いる国民の生命を守るために予算を使う必要がある。
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