2025年6月05日(2103号) ピックアップニュース
燭心
15世紀の欧州を仮想舞台に、禁忌とされた地動説の研究に命を懸けた人たちの生き様を描いたSF作品「チ。-地球の運動について-」、昨年10月から今年3月まで全編がアニメ放送され、世界で反響を呼んでいる。科学・哲学・宗教、そして暴力など、重いテーマを扱った作品であるが、世界メディアの評価は高い▼物語の中盤で、主役として登場する隻眼の修道士は、慧眼の従者らとの観測で金星の満ち欠け発見、さらに火星の逆行運動の動態から惑星の公転軌道が楕円であると解明し、地動説は証明できると確信した。しかし、異端の嫌疑をかけられ追われる身となり、先人の研究成果を燃やし国外への逃亡を決意する▼だが、従者は問う。「自らが間違っている可能性」を肯定する姿勢が、学術や研究において大事なのではないか。私たちが解明した真実の一端も、先人の研究と同じく、他者に託し検証の道を残すべきだ。不完全な理論を永遠の真理だと信じて殉じたとしても、それは科学ではない▼このシーンはSNSで話題となり、世界のメディアが取り上げたことで、本作品が各国で配信数を記録的に伸ばすきっかけとなった▼「地」人は生まれた地域の考えこそ真理だと信じ、「血」時に異なる考えをめぐり争いが起きた。「知」しかし、人は対話を通じ、過ちを認め合うことで得た「知」を後世に託し、世界の文明を発展させてきた▼平和憲法の理念こそ、わが国の得た「知」であり、私たちは後世に託す責務を果たすべきだ。(眞)