2025年6月15日(2104号) ピックアップニュース
反核医師の会・市民公開講演会
被爆体験の継承は私たちの役割


被爆経験とその継承の取り組みについて語り、核のない世界の実現を呼びかけた近藤さん(上)・中村さん(下)
近藤さんは生後8カ月で被爆。牧師である父・谷本清さんは自身も被爆しながら救護活動に尽力していたと紹介。10歳のころ、被爆体験の講演でアメリカを周遊していた谷本さんと共にテレビ番組に出演、広島に原爆を投下したエノラ・ゲイの副操縦士だったロバート・ルイス氏と対面することとなった。原爆により多くの犠牲者や孤児が生み出されたことから、近藤さんは「原爆を落としたやつをこらしめ仇を取る」と幼少期から心に決めていた。しかしルイス氏が「私はなんということをしたのか」と涙をこぼす姿を見て、相手も同じ人間であり、「私が憎むべきは戦争を起こす人たちだ」と気が付いたと語った。そして、次の時代を担う子どもたちには戦争のない平和な世界で生きてほしいこと、日本が先頭に立って核のない世界に変えなければならないと語った。
広島でレントゲン技師をしていた中村さんの父親は爆心地から1.7キロで被爆。中村さんは自身が甲状腺がんに罹患したことから、被爆二世としての自覚を持ち、2012年に発足された、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の二世委員会で中心的に活動。県被団協の二世の会では、被爆者の高齢化により証言を語れる方が少なくなったことから、紙芝居や本人の声で収録されたDVDを作成するなど、被爆体験の継承に取り組むとともに、被爆二世の健康不安や悩みが多く寄せられることから、被爆二世の援護施策の実施を求める運動を続けているとした。
また、日本被団協は原水爆の禁止と原爆被害者援護法の制定を柱としながら運動を続けてきたが、94年に成立した被爆者援護法は遺族への特別給付金や被爆者年金などの国家補償を認めないもので、国が補償を行うことは「戦時下の非常事態では国民は犠牲を受任しなければならない」とする受任論を脱し、国民の核戦争を拒否する権利を打ち立てるものだと解説し、核戦争のない世界を実現しようと呼びかけた。