兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年8月25日(2110号) ピックアップニュース

燭心

 SNSを中心に、特定の国籍や民族の人々に対する排他的な言動が散見される。こうした風潮は決して看過できない。これは個人の尊厳を傷つけるだけでなく、社会全体の健全性を蝕む病理に他ならない▼わが国は生産年齢人口の減少に直面し、特に医療や介護現場では、外国人材の活躍なくしては維持が困難な状況も少なくない。彼らは単なる「労働力」ではなく、共に地域社会を支え文化を豊かにする、かけがえのない「仲間」だ。言語や文化の壁を乗り越え、懸命に貢献してくださる同僚や、不安を抱えながらも日本の医療を頼って来られる患者さん一人ひとりの姿を見るたびに、共生社会の実現こそが私たちの未来に不可欠と確信する▼私たちは、すべての人の生命と健康、そして尊厳を守ることを誓った専門職だ。その誓いは国籍や人種によって揺らぐものではない。むしろ、多様な背景を持つ人々が安心して暮らせる環境を築くことこそ、公衆衛生の向上にも繋がる重要な責務である。診療を通じて、社会の縮図ともいえる多様な人々と向き合っているからこそ、医療現場から率先して、相互理解と尊重の精神を発信していくべきではないだろうか▼排外主義的な言動に対しては沈黙ではなく明確に「否」と声を上げ、分断ではなく連帯を選ぶ。その一つひとつの行動が、より健全で寛容な社会を築く礎となると信じている。保険医として、そして一人の人間として、誰もが尊重される共生社会の実現に向けて、共に歩んでいきたい。(眞)
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