2025年10月05日(2114号) ピックアップニュース
国際部/西宮・芦屋支部市民講演会
攻撃や空爆が「日常化」ウクライナ住民のいま
ウクライナ被災市民のリアルな現状を語る丸山さん
丸山さんはポーランドの国立ヤギェウォ大学で教鞭を執りながら、戦争の続くウクライナや隣国ポーランドに避難しているウクライナ市民の取材を続けている。2回目となる今回の講演は、戦争が長期化するもとで市民がおかれているリアルな状況、変化してきた周辺国の模様を報告した。
ロシアによる2022年2月のウクライナ侵攻から3年半が経過し、戦禍の続くウクライナではドローンによる攻撃や空爆がなかば「日常化」している実際を、丸山さんは生々しく報告。キーウに滞在していた時の経験として、市民はスマートフォンのアプリでいつ、どこに空爆が来るかを把握できており、空襲警報のように危険と分かれば地下などに退避する生活を送っていると話した。しかし、丸山さん自身も一度通知を見逃してしまい、自分のいる地域の周囲が攻撃されるのを目の当たりにして震えが止まらないほどの恐怖を感じたという。
また、戦争開始直後に義勇兵として戦地に赴いた「愛国心」のある若者はすでに多くが亡くなるか負傷したため、TCKという徴兵部隊が「人間狩り」のように、街を歩いている若者を力づくでバンに詰め込むなど強引な方法で兵力を確保していると実際の動画を流し報告。そうした若者は十分な訓練も積めないまま前線に送られ、ほとんどが命を落としていると語った。
そのように国内の人道状況が悪化するもと、多くの市民が周辺国に避難しているが、3年を経て周辺国でのウクライナ人ヘイトが酷くなっていると危機感を露わにした。丸山さんの住むポーランドでも極右政党が支えるカロル・ナブロツキ氏が6月に大統領に就任。就任してすぐに、公共の空間に設置されていたウクライナとの連帯を示すウクライナ国旗が撤去されるなど、ウクライナを支持してきたこれまでの政策を転換することを表明している。また、ヘイトクライムも多数発生しているとし、避難している児童がポーランド人の集団からの暴行被害に遭った事例を紹介した。
丸山さんはウクライナで起きていることに他国の人びとが関心を失いかけていることを危惧し、「このように日本のみなさんに発信できる場が少しでも多くあってほしいと願っている。招いていただきよかった」と話した。
会場ではウクライナ出身アーティストの絵画やアクセサリーも販売。丸山さんは「売上は全てアーティストに還元するが、日本の人びとが関心を持っていると伝えることがなによりも励みになる」と話され、参加者は作品を購入したり、写真を撮影するなどして現地の市民に思いを寄せた。



