2025年10月25日(2116号) ピックアップニュース
2024年県内市町国保アンケート調査
滞納世帯2割超、差し押さえ増加続く
加入世帯の2割は滞納し、7割が保険料減免を受けている--。協会が毎年、兵庫県内の全市町を対象に実施している「国保保険証交付等に関するアンケート」の結果がまとまった。保険証の交付状況や保険料の減免利用世帯数、滞納者数などを聞き、全市町から回答を得た。昨年12月2日からの保険証の新規発行停止を受けて、保険証の留め置き・短期証発行数は大幅に減少した。
本調査は県内の国保の保険料滞納や無保険の現状を明らかにするため1988年から行っており、33年連続で県下の全自治体から回答を得ている。今年は2025年3月に県内全市町に郵送で調査票を送付し、6月までに全市町から回答を得た。
保険料を滞納している世帯数(24年12月1日時点)は14万7168世帯と加入世帯の22.1%にのぼり、昨年度調査の12万4179世帯、18.3%から大きく増加しており、コロナ前の2019年度を底に増加が続いている。
滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合がある。この差し押さえ件数は23年度に計8991件となり、20年度以降年々増加している(図)。物価高による経済的困窮のなかで滞納世帯、差し押さえ件数とも増加していることが分かる。
保険料減免7割 自治体独自制度は一部のみ
国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯(2023年度末時点)は、46万8328世帯にのぼり、対象世帯の70.4%、約7割を占める。
自治体による独自の保険料減額制度は、尼崎市は加入世帯の32.2%が利用、西宮市はのべ利用数で5万8215件と世帯数を上回る制度利用がある。一方、神戸市は対象は加入世帯の8.8%にとどまっている。これは、子どもや障害者のいる世帯に対し神戸市が独自に実施していた控除制度だったが、24年度を最後に廃止されており、今後はさらに対象世帯が減少する見込みである。
他の市町も独自減免制度がないか利用者がわずかである。高すぎる国保料是正のため、自治体独自の減免制度の拡充が求められる。
また、国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担が免除、減額、猶予される制度が定められているが、23年度の利用者は6自治体16世帯にとどまっている。
診療報酬明細書(レセプト)点検について、民間業者委託を行っているのは41市町のうち27市町と昨年度から2市町減少した。そのうち31市町が「点検効果額目標」を「定めている」と回答している。多くの市町が、数字ありきで民間業者にレセプト請求金額の削減を行わせているということであり、大きな問題である。
国保は市民の助け合い制度ではなく、憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。この改善には、構造的問題の解決とともに、保険料引き下げのため、抜本的な国庫負担増が必要であり、同時に市町には独自の努力で法定外繰り入れの増額も求められる。また、保険料を負担しないという理由で、給付に制限をもうける制度は、低所得者を中心に、その受診の機会を奪いかねず、社会保障としては本末転倒であり、廃止すべきである。
また、有効期限の短い短期被保険者証の交付数(24年12月1日時点)も、3078世帯、0.9%(昨年度3万2097世帯、4.7%)と大幅減となった。昨年12月2日からの保険証の新規発行停止に伴い、全加入世帯に保険証を交付するのは最後となり、留め置きや短期証発行等を行わず、一斉送付した自治体が多いことがうかがわれる。
ただし、それでも3千世帯超の兵庫県民が手元に保険証がなく、必要な治療を受け難い「無保険」状態となっている現状は深刻である。
また、マイナ保険証は希望により解除できるが、この解除件数は25年1月時点で1321件あり、作成したものの資格確認書の発行を希望して解除する加入者が増えていることが分かる。
加入者の受療権を保障するため、協会は各市町に全員に一律資格確認書を発行させるよう、運動を強めていく。
本調査は県内の国保の保険料滞納や無保険の現状を明らかにするため1988年から行っており、33年連続で県下の全自治体から回答を得ている。今年は2025年3月に県内全市町に郵送で調査票を送付し、6月までに全市町から回答を得た。
保険料を滞納している世帯数(24年12月1日時点)は14万7168世帯と加入世帯の22.1%にのぼり、昨年度調査の12万4179世帯、18.3%から大きく増加しており、コロナ前の2019年度を底に増加が続いている。
滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合がある。この差し押さえ件数は23年度に計8991件となり、20年度以降年々増加している(図)。物価高による経済的困窮のなかで滞納世帯、差し押さえ件数とも増加していることが分かる。
保険料減免7割 自治体独自制度は一部のみ
-神戸市はさらに縮小
国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯(2023年度末時点)は、46万8328世帯にのぼり、対象世帯の70.4%、約7割を占める。
自治体による独自の保険料減額制度は、尼崎市は加入世帯の32.2%が利用、西宮市はのべ利用数で5万8215件と世帯数を上回る制度利用がある。一方、神戸市は対象は加入世帯の8.8%にとどまっている。これは、子どもや障害者のいる世帯に対し神戸市が独自に実施していた控除制度だったが、24年度を最後に廃止されており、今後はさらに対象世帯が減少する見込みである。
他の市町も独自減免制度がないか利用者がわずかである。高すぎる国保料是正のため、自治体独自の減免制度の拡充が求められる。
10割負担の「資格証明書」約7千世帯に
医療機関窓口で全額をいったん負担しなければならない「資格証明書」の23年度発行世帯数は6816世帯、被保険者世帯比で1.0%となり、22年度6838世帯、1.0%からほぼ横ばいである。資格証明書は、必要な医療機関受診を抑制することにつながり、患者の健康悪化につながる可能性が極めて高い。宝塚市・丹波市・市川町・福崎町・神河町の5市町は2023年度および24年度の調査時までで資格証明書を発行していない。保険証新規発行停止に伴い、今後、「資格証明書」は「特別療養」制度へと移行するが、引きつづき制度の対象とさせない働きかけが重要である。また、国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担が免除、減額、猶予される制度が定められているが、23年度の利用者は6自治体16世帯にとどまっている。
診療報酬明細書(レセプト)点検について、民間業者委託を行っているのは41市町のうち27市町と昨年度から2市町減少した。そのうち31市町が「点検効果額目標」を「定めている」と回答している。多くの市町が、数字ありきで民間業者にレセプト請求金額の削減を行わせているということであり、大きな問題である。
国庫負担の抜本的増自治体の法定外繰り入れ拡充を
高齢者、無職・低所得者が多い国民健康保険は、保険料負担が重く滞納者が多くなっている。加入世帯の7割が保険料減免制度を利用し、2割が滞納するという状況は深刻であり、加入者が安心して医療を受けられない現状の改善が必要である。これまで各市町は独自で法定外繰り入れを行い、保険料を引き下げてきたが、国保の都道府県化・保険者努力支援制度により繰り入れ総額は年々減少し続け、低い水準にとどまり、神戸市など7市町では法定外繰入金額がゼロとなっている。国保は市民の助け合い制度ではなく、憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。この改善には、構造的問題の解決とともに、保険料引き下げのため、抜本的な国庫負担増が必要であり、同時に市町には独自の努力で法定外繰り入れの増額も求められる。また、保険料を負担しないという理由で、給付に制限をもうける制度は、低所得者を中心に、その受診の機会を奪いかねず、社会保障としては本末転倒であり、廃止すべきである。
保険証廃止 未交付、短期保険証は大幅減少
保険証の未交付数(保険証の交付対象世帯総数から保険証交付済み数を除いた数、2024年12月1日時点、一部市町は更新時点)は県全体で3363世帯(前年度9282世帯)、未交付率は被保険者世帯比で0.5%(昨年度1.4%)と大幅に減少している。また、有効期限の短い短期被保険者証の交付数(24年12月1日時点)も、3078世帯、0.9%(昨年度3万2097世帯、4.7%)と大幅減となった。昨年12月2日からの保険証の新規発行停止に伴い、全加入世帯に保険証を交付するのは最後となり、留め置きや短期証発行等を行わず、一斉送付した自治体が多いことがうかがわれる。
ただし、それでも3千世帯超の兵庫県民が手元に保険証がなく、必要な治療を受け難い「無保険」状態となっている現状は深刻である。
マイナ保険証「解除」1月時点で1321件「資格確認書」一律交付を
「保険証廃止」法により、マイナンバーカードを取得していない人には「資格確認書」が発行されることとなっている。このマイナ保険証の発行基準について聞いたところ、ほとんどの市町が、国が示している基準に従い「登録をしていない全員および申請があった要配慮者に発行」と回答し、保険者の判断で可能な「加入者全員に発行」と回答した自治体はなかった。また、マイナ保険証は希望により解除できるが、この解除件数は25年1月時点で1321件あり、作成したものの資格確認書の発行を希望して解除する加入者が増えていることが分かる。
加入者の受療権を保障するため、協会は各市町に全員に一律資格確認書を発行させるよう、運動を強めていく。
図 増えつづける差し押さえ数(棒グラフ・左軸)と滞納率(折れ線グラフ・右軸)




