兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年11月05日(2117号) ピックアップニュース

燭心

 スポーツの秋である。体力の衰えを痛感し3年前からテニスを再開した。古希を目前にして30年ぶりにスクールに入学したが、部活で毎日のように練習していた経験者ならいざ知らず、週一プレイヤーにとっては昔のように打つことができない▼それでも少しずつリハビリを重ね勘を取り戻せるようになったこともあり、人生初のシングルスの試合に挑戦した。市民大会70歳以上の部ならなんとか対等に戦えるのではないかと、密かに優勝すら思い浮かべるイメトレを重ねて試合当日を迎えた。結果を敢えてここで伝えることはないだろう▼ただ、予選で完敗した83歳になる対戦相手の省エネテニスには教えられることが多くあった。年齢を感じさせない精悍な体躯の大翁は、「平日はほぼ毎日テニスをしています、週一や二では健康を維持できませんから」と日焼けした顔を崩しながら宣うのである▼日常診で「健康格差の縮小は可能か?」を講演された千葉大学予防医学センターの近藤克則先生によると、健康状態を決定する要因は生物学的要因や生活習慣のような直接的因子ではなくその背景にある構造的な因子、例えば所得、学歴などの社会階層的要因の影響が重大で、その改善が必要だという。経済格差が健康格差を生むことは容易に想像がつく。メタボ予防のために週に2回1時間以上の運動日を確保できる壮年や、フレイル予防のために社会参加する余裕のある年金受給者がどれほどいるのか。自助ではなく政治による解決が必要だ。(九)
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