2025年11月25日(2119号) ピックアップニュース
燭心
自民党は憲法改正を結党以来の党是とし、「自主憲法の制定」を掲げてきた。しかし、改憲可能な勢力がそろった現在も本格的議論には踏み込まない。多くの国民が「現行憲法に急いで改正しなければならない重大な欠陥は見当たらない」と感じているのを、改憲勢力も敏感に察しているようだ▼改憲すれば、「押し付け憲法」論は意味を失い、保守層をつなぎとめる旗印も消えかねない。逆に国民投票で否決されれば、自民党にとって結党以来の深刻な打撃となる▼現実には、解釈と法律の積み重ねにより日本は「戦争のできる国」へと変貌してきた。安保法制の整備、防衛費の大幅増額、敵基地攻撃能力の保持など、いわば「裏口改憲」が進行している。こうした変化が国民の暮らしを豊かにするはずもなく、物価は上昇し保険料や税負担は重くなり、医療・介護・子育ての現場では切実な声が高まっている。最新兵器に巨額の予算がつく一方、地域の病院や診療所、介護サービスの充実には「財源がない」と言われる▼戦争が起きれば最も深刻な被害を受けるのは一般市民だ。憲法九条の「戦争をしない」という約束は理想論ではなく国民を守るための現実的な最後の歯止めである▼改憲は国民の命や健康、生活を守る最善策なのか。憲法を尊重することは、日々の診療で目の前の一人を支えることと一本の線でつながっている。軍拡よりも医療・福祉を優先する姿勢こそが、医療従事者の基本的な倫理であり、社会の健全性を支える柱である。(空)



