2025年11月25日(2119号) ピックアップニュース
「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会・市民学習会
ヤングケアラーが炙り出す日本の社会保障の問題点
「ケアラーにはいつでも誰でもなりうる」と社会的サポートの重要性を訴えた濱島先生
大阪公立大学大学院現代システム科学研究科現代システム科学専攻教授の濱島淑惠先生が講師を務めた。
また、協会理事・同連絡会共同代表の冨澤洪基先生が『歯科酷書から考える〝人権としての歯科医療〟』として歯科分野から話題提供。
濱島先生は、ヤングケアラーの定義を「障がいや病気、高齢などのためケアが必要な家族がいて、家族の世話や家事、介護をしたり、親に代わって幼いきょうだいの面倒を見ている子どもや若者。また、日本語を第一言語としない家族のために通訳をする、介護で疲れた家族の愚痴を聞く、落ち込む家族を慰めるといった感情的サポートを行っている子どもや若者も含まれる」と紹介。
その社会背景として、①高齢化によるケアを必要とする家族の増加、②家族介護を前提とした社会福祉、③家族規模の小規模化をあげ、「大人がパンク寸前になり、子ども・若者がケアを担うケースが後を絶たない」「ケア自体は悪いことではないが、学校の欠席や勉強の遅れ、友人関係など、子どもの身体・精神面に影響が出る場合が多い」と問題点を指摘した。
また、小学校低学年から30年以上、高齢の祖母や精神疾患に悩む母親を支え続けたケア当事者の経験談を動画で紹介。「家族をケアするのは当たり前という固定観念が社会にあり、専門職もケアする人を支援する視点が弱かった」とし、「ケアラーはいつでも誰でもなりうる。家族のケアについて当たり前に話せる雰囲気と、それらを保障する社会制度の整備の両方が必要ではないか」と呼びかけた。
最後に講師は、歯科医療機関が果たしうる役割にも触れ、「口腔内の状態や、通院の付き添いなどから、ヤングケアラーの存在に気付く機会も多いのではないか。相談窓口につなぐことができれば」と問題提起した。
冨澤先生は、「子どものう蝕が全体傾向として減っている一方で、口腔崩壊の子どもが散見され、歯科治療の必要な子らが必ずしも医療に繋がっていない実態がある。その原因は、社会的決定要因が複合的に絡まっている場合が多く、いつでも・どこでも・だれでもが必要な受診ができる社会を目指す必要がある」と署名を訴えた。
参加者からは「地域や家族に介護を担うよう勧める行政に問題があるのでは」(ケアマネジャー)「日本の社会保障制度の問題が複合的に表出している」(歯科医師)などの感想が出された。
(今後、感想文掲載予定)



