兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年12月15日(2121号) ピックアップニュース

12月4日に診療報酬大幅引き上げ求め厚労省・財務省交渉
医師・歯科医師 署名2132筆を提出 全国で1万8千筆に

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(上)署名提出集会で1万8千筆の医師・歯科医師の思いを手渡した。(下)省庁交渉にのぞむ保団連役員(奥)

 12月4日、協会・保団連は、国会議員会館内で、厚生労働省と財務省の担当官を招いて、診療報酬改定に向けた交渉を行うとともに、これまでに集めた「緊急財政措置と診療報酬の大幅引き上げを求める」医師・歯科医師署名を、兵庫協会分2132筆を含む全国から寄せられた1万8072筆、両省と政府・国会議員へ提出した。兵庫協会からは武村義人副理事長と川西敏雄参与が参加した。

 協会・保団連の診療報酬本体の10%以上の診療報酬引き上げ要求について、財務省、厚労省それぞれから、回答が行われた。財務省は「メリハリをつけた診療報酬改定を行う」、厚労省も「従来の医療経済実態調査だけでなく、『医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)』の稼働により、より医療機関の経営状況をリアルに把握できるようになった。これらにもとづいて改定を行う」と述べるにとどまった。
 交渉では、武村副理事長から「MCDBは法人の経営状況しか分からない。一方で医療経済実態調査では、個人立の有床診療所はわずか7件、無床診療所でも471件、個人立の歯科診療所は213件、法人は134件だ。しかもこうした調査に回答できる医療機関は、それなりに余裕のあるところだけだ。もっと現場の声にもとづいた改定を行うべきだ」と訴えた。
 川西参与は「医療提供体制の所掌は厚生労働省だ。財務省が財政制度等審議会で、勝手に青写真を描くべきではない。しかも、内容は患者、国民負担の引き上げ、医療提供体制や公的保険範囲の縮小ばかり。医科・歯科診療所には、十分な剰余金があるから診療報酬を『適正化』するとまで書いてある。おかしいのではないか」と追及した。
 これに対し、厚労省は「医療経済実態調査は対象を抽出しており、サンプル数が少なくなっているのは事実」と回答。本日の意見は、省内で共有し、診療報酬改定に活かしていきたいと述べた。
 財務省は「診療所も含めて全て診療報酬を引き上げるとなれば、莫大な医療費がかかる。現在、現役世代の社会保険料負担は年収の3割にも上る。これ以上、現役世代の負担が増えれば、高齢化のピークを迎える2040年ごろには、国民皆保険制度の持続可能性が脅かされかねない。そうならないためにも、メリハリのある診療報酬改定が必要だということについては、ご理解をいただきたい」と述べた。また、「医療政策についての所掌は厚労省であることは間違いない。厚労省が出した医療政策に必要な予算に裏付けを行っていくのが財務省の仕事である」と述べた。
 これらの発言に対して、竹田智雄保団連会長は、「国民皆保険制度の持続可能性というが、地域から医療がなくなれば、それこそ持続可能性がなくなってしまう。病院とともに地域医療を面で支えている医科・歯科診療所がなくなってしまわないように、診療報酬での手当てをきちんと行うべきだ」と述べるとともに、「財源は必ずある」として、「税収は上振れしているし、大企業には史上最高の内部留保が蓄積されている。社会保障の本質は所得再分配であるのだから、そうした企業、富裕層に応分の負担を求めることが大切である」と締めくくった。
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