兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2026年1月25日(2123号) ピックアップニュース

薬科部「医薬品の『限定出荷』等に関するアンケート」結果 概要
医薬品安定供給の危機 示す

兵庫県保険医協会薬科部世話人  長光 由紀、滝本 桂子、西村ゆかり、上田 富江、木戸口美和子、古井 裕子

 薬科部は2025年9月12日~11月7日にかけ、医薬品の「限定出荷」等に関するアンケートを実施。薬科部会員(98薬局)にFAX及び郵送で回答を依頼し、52件の回答を得た(回答率約53%)。
 厚労省による医薬品の出荷状況に関する調査では、2025年9月時点でも医薬品全体における「限定出荷」「供給停止」の割合は全体の14%を占め、2200品目を超える厳しい「限定出荷」等の状況が続いていた。薬科部は、この「国による医薬品安定供給の危機」を踏まえ、薬剤師の日常現場での経験や苦労を医師・歯科医師と広く共有し、見通しなど情報提供を行うために独自にアンケートを行った。アンケート結果の概要を紹介する(結果詳細、寄せられた具体的な声については協会ウェブサイトに掲載、記事最後の二次元コード参照)。

患者への深刻な影響明らかに
 アンケート結果は、医薬品のいわゆる「出荷調整」(限定出荷)が、一部の特殊な事象ではなく、すべての薬局の日常的な問題であることを示している(問1)。
 入手困難な薬剤はカルボシステイン、フスコデ、オーグメンチンなど風邪や感染症の治療に用いられるものが上位を占め(問2)、とりわけ高齢者、障害者、基礎疾患をもつ人をはじめ多くの人々の健康にかかわる問題となっている。実際に回答者のほとんどが患者への影響を経験しており(問4)、その内容は深刻である。
 寄せられた声から明らかとなった具体的課題は下記の通りである。
■治療の中断と症状悪化:「不足分が入荷しないため、患者さんが服用できない期間があった」など、必要な薬が手に入らないことで治療計画に支障をきたし、症状が悪化するケースも報告されている。
■物理的・精神的負担の増大:「遠方の病院を受診し、家の近くの当薬局へ来局されたが、在庫がないため再度病院近隣の薬局へ行くことになった」など、患者が不必要な移動を強いられ、不要な時間と労力を費やしている現状も示された。
■服薬しづらくなるという問題:「錠剤が入荷しないため細粒の後発品にしたら、飲みにくくコンプライアンスが低下した」など、患者が服薬しやすい剤形を選べないことで治療効果の低下や服薬の中断につながるリスクがあることも示唆された。
薬局への影響と背景にある構造的課題
 本来、「出荷調整」は一時的な需給の調整を指すが、現在の医薬品不足の状況は、この言葉で済まされない構造的な「医薬品の安定供給の危機」であって、保険診療の中で必要とする薬剤が使用できないことは大きな問題である。
 この問題の背景には医療制度や流通システムに根差した複数の構造的な課題が存在する。
■低薬価政策と不採算品目:危機の原因と解決すべき問題として回答者の83%が「低医療費-低薬価政策」を、77%が「メーカーによる不採算品目の供給停止」を原因として挙げている(問5)。
 これらは医薬品メーカーが安定的な供給を維持するための経済的インセンティブを失っていることを示しており、根本的な解決には薬価制度の納得のいく見直しが不可欠である。
■情報の不透明性:「欠品案内が来ないことも多い」など、メーカーや卸からの情報提供が不十分な実態も示されており、必要な情報がタイムリーに共有されないため、薬剤師は手探りで在庫を探さざるを得ず、業務負担が増大している。
■現場の過剰な負担:薬局は「メーカー・卸業者に問い合わせる」「医師に処方変更を依頼する」といった対応に追われ(問3)、「対物から対人へ」と求められる業務変革とは裏腹に、物の確保に余分な時間を取られ、本来の専門性を発揮できない状況が見られている。
課題解決に向けて
 今回のアンケート結果が示す課題を解決するためには、単発的な対策ではなく、以下のような多角的なアプローチが必要と考えられる。
■サプライチェーン全体の再構築:生産地も含めメーカーから薬局までの情報共有の仕組みを強化し、流通の透明性を高める必要がある。医薬品の原材料が国内のものか、海外のものか、製造工場はどこにあるのか、そして海外の場合はその品質はどのように確認されているのかが明らかにされる必要がある。
■政策誘導の転換:安定供給を評価する薬価制度への見直しなど、国全体として安定供給を最優先する姿勢を打ち出すべきである。
■現場負担の軽減:薬局が不良在庫を抱えるリスクを軽減する仕組みや、薬剤師が円滑に代替品を確保できる体制を構築することが求められる。この問題は、患者の健康と薬剤師の業務に直接関わる日常的で喫緊の課題であり、さまざまな職域、単位で関係各所が具体的に連携して解決策を講じる必要がある。
おわりに
 今回のアンケートは、協会薬科部会員を対象にパイロットスタディとして実施したものだった。2025年9月24日「ロゼバラミン」の供給不足問題に関して西宮・芦屋支部の広川恵一顧問、伊賀幹二理事が厚労省との懇談に出向き、本アンケート16%時点の結果も現場の声として伝えることができた。
 2020年12月小林化工事件に端を発した5年にも及ぶ医薬品の「出荷調整」の状況は、薬剤師業務を圧迫し、個々の薬局・薬剤師の努力の限界をすでに超えている。
 医師・歯科医師・薬剤師・医療職すべてが協力して国や国民にこの窮状を訴えていくべきと考える。

▼結果詳細はこちらから
2123_03.jpg

2123_04.gif
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方