2026年1月25日(2123号) ピックアップニュース
2026年度診療報酬改定に関する談話
-医療を守ることは、国民の権利と地域社会を守ることである-
今次診療報酬改定率が決定したことを受け、協会は1月14日、下記の理事長談話を発表した。
2026年度診療報酬改定に関する談話
しかし一方で、人件費や物価、エネルギー価格の上昇が続く中、病院・診療所を問わず経営環境は依然として厳しく、診療縮小や閉院が現実の問題となっている。今回の改定は、深刻化する医療機関の経営危機を打開し、地域医療を安定的に維持するには、なお不十分と言わざるを得ない。
医療提供体制を維持し、国民が必要な医療を等しく受けられる環境を整えることは、日本国憲法が保障する生存権に基づく国の責務である。医療は市場原理に委ねられる商品ではなく、公定価格によって支えられる社会保障であり、それを現実の費用構造に見合った水準で維持することは、政策上の選択ではなく国の責任である。また、地域に根ざした医療機関は雇用を生み、地域経済と暮らしを支える重要な社会インフラであり、医療を守ることは地域社会を守ることに直結する。
今回の改定を巡っては、2024・2025年分の物価高への対応を基本診療料の引き上げで行い、2026年度以降の物価上昇分を「物価上昇に関する評価」として加算で対応する枠組みが示されている。しかし、光熱費や委託費、消耗材料費などの物件費は構造的・恒常的な経営費用であり、将来分を可変的な加算に切り分ける設計は、縮小や凍結が容易で、実質的な医療費削減が常態化する危険性をはらんでいる。物価対応は医療費抑制の調整弁ではなく、社会全体で負担すべき医療提供コストの増加分として、原則として基本診療料に反映させるべきである。
賃上げ(人件費)対応については、ベースアップ評価料を軸に幅広い職種を対象とする方向性が示されたこと自体は評価できる。しかし、賃上げを「2年間に限った措置」と位置づけ、評価料方式に依存する限り、将来収入の不確実性から恒常的なベースアップに踏み切れないという問題は解消されない。賃上げ原資は、特別な評価として切り出すのではなく、初・再診料や入院基本料など基本診療料の引き上げによって、安定的・恒久的に確保すべきである。
さらに、中医協で示された整理案では、かかりつけ医機能の評価について、機能強化加算の要件見直し、生活習慣病管理料Ⅰ・Ⅱの見直し、特定疾患療養管理料の対象疾患要件の見直しなどが具体的な検討対象とされている。これらはいずれも、地域のかかりつけ医が担ってきた継続的・計画的な療養管理の実態に即して検討されるべき課題である。一方で、「効率化・適正化」を名目とした要件整理や点数の見直しが先行すれば、管理の価値が過小評価され、地域医療機能の低下につながりかねない。
物価対応や賃上げ対応、機能評価、効率化を理由に、加算の積み上げや包括評価の拡大が進み、診療報酬体系は複雑化している。医療提供体制の土台は基本診療料で支え、必要な医療行為は必要な分だけ正当に評価する出来高払いを基本とする方向へ、診療報酬体系を整理・再構築すべきである。
加えて、「社会保障制度改革」の名の下で、OTC類似薬や長期収載品、いわゆる食品類似薬の給付制限、自己負担割合の見直し、高額療養費制度の縮小、75歳以上の保険料・窓口負担における金融所得の勘案などが挙げられており、患者負担、とりわけ高齢者に偏重した負担増が進められようとしていることは看過できない。
私たちは、今回の改定が一定の前進を示したことを確認しつつも、憲法が求める医療提供体制、そして地域社会を守るにはなお不十分であるとの立場を明確にする。国は責任をもって、物価・賃金上昇を正面から反映した、基本診療料を中心とするさらなる診療報酬の引き上げを行うべきであり、その実現を強く求める。
2026年度診療報酬改定に関する談話
-医療を守ることは、国民の権利と地域社会を守ることである-
兵庫県保険医協会
理事長 西山裕康
しかし一方で、人件費や物価、エネルギー価格の上昇が続く中、病院・診療所を問わず経営環境は依然として厳しく、診療縮小や閉院が現実の問題となっている。今回の改定は、深刻化する医療機関の経営危機を打開し、地域医療を安定的に維持するには、なお不十分と言わざるを得ない。
医療提供体制を維持し、国民が必要な医療を等しく受けられる環境を整えることは、日本国憲法が保障する生存権に基づく国の責務である。医療は市場原理に委ねられる商品ではなく、公定価格によって支えられる社会保障であり、それを現実の費用構造に見合った水準で維持することは、政策上の選択ではなく国の責任である。また、地域に根ざした医療機関は雇用を生み、地域経済と暮らしを支える重要な社会インフラであり、医療を守ることは地域社会を守ることに直結する。
今回の改定を巡っては、2024・2025年分の物価高への対応を基本診療料の引き上げで行い、2026年度以降の物価上昇分を「物価上昇に関する評価」として加算で対応する枠組みが示されている。しかし、光熱費や委託費、消耗材料費などの物件費は構造的・恒常的な経営費用であり、将来分を可変的な加算に切り分ける設計は、縮小や凍結が容易で、実質的な医療費削減が常態化する危険性をはらんでいる。物価対応は医療費抑制の調整弁ではなく、社会全体で負担すべき医療提供コストの増加分として、原則として基本診療料に反映させるべきである。
賃上げ(人件費)対応については、ベースアップ評価料を軸に幅広い職種を対象とする方向性が示されたこと自体は評価できる。しかし、賃上げを「2年間に限った措置」と位置づけ、評価料方式に依存する限り、将来収入の不確実性から恒常的なベースアップに踏み切れないという問題は解消されない。賃上げ原資は、特別な評価として切り出すのではなく、初・再診料や入院基本料など基本診療料の引き上げによって、安定的・恒久的に確保すべきである。
さらに、中医協で示された整理案では、かかりつけ医機能の評価について、機能強化加算の要件見直し、生活習慣病管理料Ⅰ・Ⅱの見直し、特定疾患療養管理料の対象疾患要件の見直しなどが具体的な検討対象とされている。これらはいずれも、地域のかかりつけ医が担ってきた継続的・計画的な療養管理の実態に即して検討されるべき課題である。一方で、「効率化・適正化」を名目とした要件整理や点数の見直しが先行すれば、管理の価値が過小評価され、地域医療機能の低下につながりかねない。
物価対応や賃上げ対応、機能評価、効率化を理由に、加算の積み上げや包括評価の拡大が進み、診療報酬体系は複雑化している。医療提供体制の土台は基本診療料で支え、必要な医療行為は必要な分だけ正当に評価する出来高払いを基本とする方向へ、診療報酬体系を整理・再構築すべきである。
加えて、「社会保障制度改革」の名の下で、OTC類似薬や長期収載品、いわゆる食品類似薬の給付制限、自己負担割合の見直し、高額療養費制度の縮小、75歳以上の保険料・窓口負担における金融所得の勘案などが挙げられており、患者負担、とりわけ高齢者に偏重した負担増が進められようとしていることは看過できない。
私たちは、今回の改定が一定の前進を示したことを確認しつつも、憲法が求める医療提供体制、そして地域社会を守るにはなお不十分であるとの立場を明確にする。国は責任をもって、物価・賃金上昇を正面から反映した、基本診療料を中心とするさらなる診療報酬の引き上げを行うべきであり、その実現を強く求める。
以上



