兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2026年2月05日(2124号) ピックアップニュース

診療報酬改定「これまでの議論の整理」へのコメント
基本診療料等の抜本的引き上げこそ必要

 1月14日、昨年末に示された改定率(全体+2.22%)等に基づいて中央社会保障医療協議会(中医協)に対し諮問が行われ、「これまでの議論の整理」が公表された。医科・歯科それぞれについて内容の一部を抜粋し、協会のコメントを掲載する。

医科・歯科共通 *「○」は抜粋⇒以下は協会コメント
○これまでの物価高騰による医療機関等の物件費負担の増加を踏まえ、初・再診料等及び入院基本料等について必要な見直しを行う。
⇒病院・診療所とも過去最悪ペースの倒産件数、赤字割合で、利益率も大きく落ち込んでいる中、「令和6年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分」+0.44%で基本診療料等を引き上げるとしているが、病院0.4%、診療所に至っては医科+0.02%、歯科+0.01%では全く不十分である。また「今後2年間の物価対応分」+0.76%(2年度平均)を基本診療料等に上乗せするとしているが、日銀が示した今後2年間の物価上昇率(予測)3.6~4.0%(2026年度1.6~2.0%、2027年度1.8~2.0%)にも全く見合わない水準である。少なくともこれまでの物価上昇等に見合うだけの「緊急対応」を行うとともに、今後の物価上昇分についても別枠による上乗せではなく、基本診療料等の抜本的引き上げで対応すべきである。

○看護職員、病院薬剤師その他医療関係職種の確実な賃上げを更に推進するとともに、令和6年度診療報酬改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種についても他の職種と同様に賃上げ措置の実効性が確保される仕組みを構築する。
⇒そもそもベースアップ評価料は届出・管理の煩雑さに加え、「いつ梯子を外されるか分からない」等の懸念から、届け出ている医療機関は医科診療所の4割、歯科診療所の3割半ばに留まる。全ての医療従事者の賃上げが可能となるよう、処遇改善は基本診療料の引き上げにより行うべきである。
 「賃上げ対応」に+1.70%を見込んでいるが、人事院給与勧告(2025年)の3.62%の半分にも満たないばかりか、2024年度で医療関係職種(医師・歯科医師を除く)の月給与平均は産業全体を5%弱下回る水準となっている。これ以上の人材流出を抑制するためにも、少なくとも10%以上の賃上げが可能となる程度の抜本的な点数引き上げが必要である。

○医療DX関連施策の進捗状況を踏まえ、医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の評価を見直す。
⇒医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算を廃止(または引き下げ)するならば、オンライン資格確認の導入や維持・管理費用に相当する額(差額)を基本診療料に上乗せするべき。

○後発医薬品の使用促進等の観点から、処方等に係る評価体系を見直す。
⇒後発品を中心とした医薬品供給不安が継続しており、加算による評価継続は必要不可欠であることから、一般名処方加算等の引き下げには反対。

○長期収載品の選定療養について、後発医薬品の供給状況や患者負担の変化にも配慮しつつ、創薬イノベーションの推進や後発医薬品の更なる使用促進に向けて、患者負担の見直しを行う。
⇒選定療養によるさらなる患者負担増に反対。「創薬イノベーションの推進」等は国費により国が責任をもって行うべきで患者に負担させる理由がないばかりか、「将来にわたって7割給付を維持する」とした健保法付則にも反し、保険料を支払っているにもかかわらず必要な医療が受けられなくなる患者をさらに増やす点において国民皆保険制度の空洞化を進めるものである。

医 科
【医科外来】

○特定疾患療養管理料は、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したものであることを踏まえ、当該管理が適切に実施されるようその対象疾患の要件を見直す。
⇒改定のたびに「特定疾患」の対象を変更し、医療費を抑制しようとする方向に反対。「特定疾患」の変更ではなく、生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料のいずれを算定するかを医療機関で判断できるようにするとともに、両方の対象疾患があれば併算定を可能とするべき。

○連携型の機能強化型在宅療養支援診療所において、地域の24時間医療提供体制を支える医療機関を更に評価する観点から、自ら実際に医療提供体制を確保している時間に応じて評価を見直す。
⇒24時間医療提供体制をとることが難しい医療機関への評価を引き下げることに反対。24時間体制が確保できていない医療機関も含め連携により機能を補完しあい、地域の在宅医療を確保していく必要性は、高齢化の進展によりさらに高まっている。

○患者の医療・介護の状態を踏まえた適切な訪問診療の提供を推進する観点等から、在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料について、要件を見直す。
⇒中医協では、要介護度が低いが在宅医療を継続している患者割合等を勘案した評価とすること等が議論されているが、要介護度が低くとも在宅医療を継続する必要性が高い患者は少なくなく、要介護度など患者の状態に着目して評価を引き下げることに反対。

○改正医療法に基づき都道府県知事が行う、地域で不足している医療機能等に係る医療提供の要請に応じず、保険医療機関の指定が3年以内とされた医療機関については機能強化加算、地域包括診療加算及び地域包括診療料の対象としない等、評価を見直す。
⇒自由開業医制、職業選択の自由を侵害するもので反対。ディスインセンティブによる誘導でなくOECD平均よりはるかに低い人口当たりの医師数を増やすことにより解決すべき。

○長期処方及びリフィル処方箋による処方を適切に推進する観点から、計画的な医学管理を継続して行うこと等を評価する医学管理料の要件を見直す。
⇒そもそも処方期間の決定は、医師が診察により患者の状態等を見極めながら医学的に判断して行うものであり、医学管理料にリフィル処方や長期処方へ誘導するような要件を追加することに反対。

○保険給付の適正化の観点から、栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の要件を見直す。
⇒「同程度の栄養を有する食品が市販されている」ことを理由に薬価収載された医薬品の処方を制限することは、「OTC類似薬」の保険外し等と同様、国民皆保険を空洞化させるもので反対。
【医科入院】
○回復期リハビリテーション病棟において、より質の高いアウトカム評価を推進する観点から、リハビリテーション実績指数の算出方法及び除外対象患者の基準を見直す。
⇒一面的なデータのみに基づいた「アウトカム評価」による診療報酬の見直しには反対。アウトカム評価は回復見込みの高い患者の選別につながる危険性があるばかりか、医療に対する「成果」を施設基準に持ち込むことは、療養の給付の原則からも逸脱する。

○データに基づくアウトカム評価を推進する観点から、データ提出加算に係る届出を要件とする入院料の範囲を拡大する。
⇒データ提出加算の届出を要件とする入院料の範囲拡大に反対。データ提出は療養の給付とは直接関係がなく、入院医療の確保以外の負担を病院に強いるものであって、特に人員確保が困難な中小病院に大きな負担となっている。

○食材料費や光熱・水道費の上昇等を踏まえ、入院時の食費及び光熱水費の基準額を引き上げる。
⇒入院時の食費基準額を40円/食、光熱水費基準額を60円/日引き上げるとしているが、現下の物価、人件費、委託費等の高騰を踏まえると全く不十分。また、引き上げについては患者負担とするのでなく国費によるべきである。
歯 科
○口腔疾患の重症化予防等の生活の質に配慮した歯科医療の推進、口腔機能発達不全及び口腔機能低下への対応の充実、歯科治療のデジタル化の推進
⇒口管強の施設基準による一物二価は解消し、医療連携など地域で果たしている歯科医療のあり方で評価すべき。どの医療機関もかかりつけ歯科医である。口腔機能の管理やSPTなどどこでも取り組める診療行為は等しく評価し、取り組みやすいよう改善すること。
⇒歯管は初診時に治療計画を作成して医学管理を行うにもかかわらず、初診月のみ減算されることはまったく妥当性がない。
⇒小機能、口機能は、点数の引き上げや要件を緩和し、一部検査に施設基準が設けられている不合理の改善を要求する。
⇒SPTとP重防の治療間隔などは、歯科医師の判断で実態に応じて短縮可能にするなど、施設基準によらず患者にわかりやすい仕組みに改善すること。
⇒歯科矯正相談料は、患者への丁寧な説明に時間を要しており点数が低すぎる。学校健診に限らず保護者からの相談の場合も算定するなど要件緩和を求める。
⇒周術期等口腔機能管理計画策定料は手術に係る一連の治療を通じて1回のみというのは実態にあっていない。同管理料を算定すれば歯管が算定できないため、歯管算定が前提となっているF局面塗布処置などが算定できないのは不合理であり、見直すべきである。
⇒歯科衛生実地指導料から口腔機能指導加算を独立させて、歯科衛生士への研修等を要件とすることが議論されているが、受講しやすくすること。時間要件や回数の撤廃など、歯科衛生士の専門性の評価拡大を求める。
⇒金パラ価格高騰による歯科医療機関の経営圧迫は、保険診療制度の視点からもありえない。緊急に赤字を解消すること。年4回ではなく緊急迅速な対応を行うこと。材料価格の変動に耐えられる技術料にすべきである。
⇒歯科技工士連携加算について、別の場所で従事している歯科技工士が対面で連携するには点数が低すぎる。光学印象歯科技工士連携加算は対面での確認である必要性がないので改善すること。
⇒光学印象は、CAD/CAM冠への対象拡大が議論されているが、機器価格に見合う点数引き上げも求める。
⇒歯内療法、補綴関連の低すぎる歯科技術料の抜本的な引き上げを要求する。歯科技工士に配分される実効的なルールの確立など国民の口腔の健康を守る責任を果たすよう強く求める。
⇒CAD/CAMインレーとCAD/CAM冠について、大臼歯の咬合支持等の要件見直しが議論されているが、材料Ⅲ使用の適用要件は不明瞭なケースも多く現場に混乱をもたらしている。歯科医師の判断で算定できるように改善を求める。
⇒歯科医療にそぐわないクラウン・ブリッジ維持管理料は廃止して、歯冠修復と欠損補綴に財源を振り分けること。
⇒医管について、安全の観点でモニタリングしながら診療した場合は、対象となる診療項目を限定せず、どの医療機関でも算定可能にすべき。
⇒NiTiロータリーファイル加算は、デンタル等で歯根湾曲が確認され使用した場合は算定可能にすべき。
⇒施設基準は必要最小限に見直すこと。歯初診注1や歯訪診、補管は廃止を。

○入院患者が有する口腔状態の課題への質の高い対応、口腔管理の充実のため、病院と連携した入院中の患者に対する歯科訪問診療について、新たな評価を行う
⇒病院歯科の有無に関係なく、また、周術期の連携だけでなく、例えば有床義歯製作途中で入院した場合に装着や調整・修理などで患者の必要に応じて歯科訪問診療を可能にすることを求める。

○質の高い在宅歯科医療推進のための見直し
⇒歯科訪問診療料2,3についても20分要件を撤廃すること。
⇒同一建物、単一建物の概念を是正すべき。同じマンションなどで複数の方を診るとかなりの減算になるのは納得できない。移動時間はそもそも点数に含まれないのだから、建物の概念はなくすべき。
⇒訪衛指の時間要件廃止を。訪衛指と口腔衛生管理加算の回数制限廃止を。

○人口の少ない地域の実情を踏まえた評価
⇒歯科巡回診療車の発想よりも、無歯科医地域を増やさないための手立て、そのような地域で歯科医療を続け支えている歯科医療機関に対して続けられるような保険点数とDX化の免除などが必要。

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