兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2026年3月15日(2128号) ピックアップニュース

政策解説
「OTC類似薬」保険外し・75歳以上の窓口負担に「金融所得」...
皆保険解体の医療改悪法案

 政府・与党が2026年3月上旬に提出予定の「医療保険制度改革関連法案」は、少子化対策や財政健全化の名の下、国民皆保険制度の根幹を解体し、患者への負担転嫁を加速させるものである。本法案に含まれる各制度の改変内容を、批判的に検証したい。

【実態シミュレーション】改悪案は患者の家計をどう破壊するか
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皆保険を空洞化させるOTC類似薬の保険外し
 まず、問題視すべきは、市販薬(OTC)と成分が類似する医療用医薬品について、薬剤費の4分の1(25%)を全額患者負担とする「一部保険外療養」の創設である。
 湿布薬、ヘパリン類似物質などの保湿剤、ビタミン剤、抗アレルギー薬、漢方薬など、約77成分・1100品目が対象となる見込み。患者は、まず薬剤費の25%を自己負担として支払い、残りの75%に対して従来の1〜3割負担を支払うことになり、負担は大幅に増大する。
 健康保険法附則第2条は、療養の給付の割合について将来にわたって維持されるものと定めている。一部を保険外とする手法は、この法の精神を骨抜きにする措置であり、国民皆保険制度の形骸化を意味する。さらに、医師が医学的知見に基づき治療に不可欠と判断して処方した薬に経済的負担を強いて、その使用を控えさせることは、実質的な処方権の制限にほかならない。適切な初期治療が阻害され、結果的に重症化を招くリスクが極めて高い。
 この制度改悪の背景には、自民党と日本維新の会による連立合意がある。昨年12月19日の両党の政調間合意の文書に記された試算は、4分の1の特別徴収をした場合は5300億円の削減効果が見込まれる一方、完全な自己負担(10割負担)へと移行した場合には2兆円もの削減が見込まれると弾き出しているのだ。今後、対象品目が際限なく拡大され、全額自己負担へと引き上げられるシナリオが敷かれているのである。
高齢者のペナルティとなる75歳以上の金融所得の反映
 75歳以上の窓口負担割合の判定に、上場株式の配当などの「金融所得」を合算する措置も深刻な問題を孕んでいる。金融機関に法定調書のオンライン提出を義務付け、これまで申告不要とされていた特定口座の資産捕捉を徹底する方針である。
 しかし、応能負担の原則を追求するのであれば、金融所得は税や保険料にこそ反映させるべきである。窓口負担に資産を連動させる設計は、病気やけがで医療を必要とする者から多く徴収するという不合理なものである。
 資産による負担の公平性を語るのであれば、まずは現役世代を含めた全世代で金融所得を、保険料や税体系に一元的に反映させる仕組みを構築するのが筋である。
経営実態を無視した出産費用の保険収載
 少子化対策の目玉とされる出産費用(正常分娩)の26年度からの保険適用化についても、経営実態を無視した「低単価」への懸念が拭えない。
 現在の日本における出産費用は、東京都で平均約60万円超、地方は40万円台と大きな格差がある。一方で米国では平均100万〜200万円を超えるのが一般的だ。
 日本産婦人科学会や日本産婦人科医会は、一律料金による産科医療の質の低下を懸念し、24時間体制の維持費や人件費を適切に評価した高い点数設定を求めている。また、日本医師会は中規模診療所の分娩経費が1件あたり70〜75万円に達するとの試算を示し、これに基づいた十分な給付水準を要望している。
 政府が財政抑制のために全国一律の低い単価を強行すれば、産科クリニックの経営は一気に破綻しかねない。
「長瀬効果」を悪用した高額療養費の改悪
 また、26年度予算案に盛り込まれた高額療養費制度の上限額引き上げ計画では、所得区分が細分化され、例えば、現行の「年収約370万から770万円」の中間所得層は3段階に分割され、月額負担上限が現行の約8万円から、所得に応じて約8万5千円、約9万8千円、約11万円へと大幅に引き上げられる。
 自己負担が増えれば患者が受診を控えるという「長瀬効果(価格弾力性)」を、政府がこの予算削減の根拠に据えている点は人道的に看過できない。自己負担が高くなったから治療を止めるという患者の悲痛な受診抑制を「政策効果」として予算に織り込む姿勢は、命を預かる厚生労働行政として極めて不適切と言わざるを得ない。
署名に協力を
 協会・保団連は、患者の命と健康を脅かす負担増の中止を求め、薬の追加負担を中心に国会に向けた請願署名運動を広げている(左)。一人でも多くの会員が請願署名に賛同し、ともに声を上げることを強く訴えたい。
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署名にご協力ください!
「ロキソニンやアレグラなど薬の追加負担はやめてください」
オンライン署名はこちらから
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署名用紙のお申込み・お問い合わせは、電話078−393−1807まで
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