兵庫県保険医協会

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2009年4月

【水曜】 高血圧治療の新しい考え方 ―2009年ガイドライン―

 血圧とは、心臓から送り出される血液が血管の壁を押す圧力のことです。この圧力が高い状態を「高血圧」と言います。血圧の高い状態を放っておくと、血管の壁は次第に硬く、厚くなっていきます。この状態が「動脈硬化」です。動脈硬化が進むと脳や心臓、腎臓および血管などに、さまざまな病気を招きます。
 最近の欧米の報告によれば、高血圧患者さん15万人を対象に、心臓病や脳卒中の発症と血圧の薬による効果を調べると、お薬で血圧が下がっている人ほど、心臓や脳の病気の発症が少ないことがわかっています。またわが国においても2004年の厚生労働省の人口動態統計によると、年間死亡総数100万人のうち心臓病や脳卒中で亡くなった方が約3分の1を占め、国民全体で血圧をわずか下げるだけで、亡くなる方が年間数万人減少すると発表しています。
 一般に、日中は血圧が高く睡眠中は低下するものです。しかし、睡眠中に十分に血圧が下がらない「夜間高血圧」の人は、血管や心臓に負担がかかり、夜間に突然死の危険性が高いことが報告されています。一方、早朝に急激に血圧の上がる「早朝高血圧」の人や、診察室では正常血圧なのに家庭で測るときに高くなる「仮面高血圧」の人は、早朝に脳卒中や心筋梗塞を起こしやすいといわれています。さらに、仕事のストレスなどで血圧が高くなる「職場高血圧」や、ふだんは正常なのに、病院の診察室で測るときだけ血圧が高い「白衣高血圧」があります。
 したがって高血圧の診断や治療に際しては、診察室の血圧だけでなく、朝の起床時、夜の就寝前などに測る家庭血圧を評価することが必要です。近年、普及している家庭血圧計で、一日のうちの血圧変動を知ることができます。
 我が国には、高血圧の人が約4,000万人以上いるとされています。2009年の「高血圧治療ガイドライン」では、診察室の血圧値140/90mmHg以上、家庭血圧値135/85mmHg以上を、高血圧と診断します。24時間にわたる厳重な血圧管理の重要性が強調され、血圧治療の目標は、若年・中年者は130/85mmHg未満、高齢の方でも140/90mmHg未満です。脳卒中の患者さんは140/90mmHg未満です。糖尿病や腎臓病、心筋梗塞のある有病者といわれる人ではさらに低く、130/80mmHg未満という厳しい基準で管理するように取り組むことになりました。
 自覚症状が乏しいため放置されがちな高血圧ですが、早め早めにかかりつけ医を受診し、積極的かつ十分な治療で、重い病気の発症や進行を防ぎましょう。

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