兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2012年6月

【火曜】 診療報酬改定で何がかわったのか①

 今年の4月に全国の病院や診療所、歯科医院、調剤薬局の診療報酬が改定されました。皆さんが窓口で支払う金額も少し変わったことと思います。

 診療報酬とは、医療保険から医療機関に支払われる治療費のことで、すべての医療の価格と内容を国が定めたものです。

 一般の方が診療報酬と聞くと、医師や歯科医師だけの収入と誤解されがちですが、その中には、診察、手術などの医師の技術料だけでなく、入院や外来治療に伴う看護師、薬剤師などの医療スタッフのサービス料、薬や血液・X線検査などの費用も含まれています。

 つまり診療報酬は、患者さんが「いつでも・どこでも・誰でも」質の高い、安全・安心の医療を受けるために必要な費用なのです。

 今年の改定では、「社会保障と税の一体改革」の方向を先取りした実質マイナスの改定となりました。残念ですが、国民全体の医療費を抑制する方向となったのです。

 今月と来月は、この診療報酬改定についてお話いたします。

 今月は入院治療に関することです。

 その特徴は、皆さんもお気づきのように、入院日数を短くするために早く退院させ、病院と診療所の連携を強め、強引に在宅医療に誘導するようにした点です。入院より在宅へ、治療より介護への流れを強め、費用のかかる医師より、看護師や介護職員に働いてもらい、よりいっそう医療費を抑制する方向が示されたのです。そのため、幅広く地域医療を守りながら、専門性の高い医療も提供している診療所や中小病院の役割を評価したものとはなっていません。

 さて、入院できる病院には様々ありますが、これらは病気の緊急性や、看護師やスタッフの人数で分類されています。政府は、団塊の世代が75歳を超える2025年に、入院患者さんが増えないようにして、医療費の抑制をすすめようとしています。具体的には、入院の平均日数を減らしたり、症状に必要な人員の配置や看護の必要性を厳しくしたり、入院後すぐに退院先を調整した場合には、点数を加算する仕組みなどが決められました。もちろん今まで通り入院が長くなると点数が低くなる設定はそのままで、いずれも病院から早期に退院を誘導する内容となっています。

 日本では政府が30年以上にわたって診療報酬を抑制し続けたため、医療費の総額は先進国でも最低に近く、救急医療や産科、小児科を中心に医療崩壊が多くの地域で起こっています。兵庫県保険医協会は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条を実現するために、診療報酬改善による医療の充実を求めています。

 私たちは、保険で良い医療ができるように、医科・歯科の診療所や病院の機能を正しく評価し、診療報酬、つまり医療に必要なお金を大幅に引き上げるよう要求するとともに、他の国よりも著しく高い窓口の一部負担金を少なくする方向で努力しています。ご理解、ご協力いただきますようお願いします。

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