兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

健康情報テレホンサービス

2014年1月

【火曜】 智歯(ちし)周囲炎(親知らずの痛み)

 奥歯の3番目(第3大臼歯)を智歯、いわゆる親知らずと呼びます。この歯の周囲が炎症を起こすことを「智歯周囲炎」といいます。20歳前後~30歳くらいの若い人に起こることが多く、上顎(うわあご)よりも下顎(したあご)にしばしばみられます。

 現代人は顎が小さく,智歯が生えるスペースがないため、歯肉の下に半分以上埋まったまま止まってしまい、歯肉の隙間から口の中の細菌が感染して生じると考えられています。

 よくみられる症状は、智歯のあたりの痛みや歯肉の腫れです。重症になると顔面が腫れたり、口が開けにくくなったり、発熱や倦怠感が出ることもあります。疲れがたまった時や抵抗力が低下した時に症状が出ることが多く、例えば、試験勉強中の学生さんや出産後で寝不足が続くお母さん、仕事が忙しいサラリーマンなどが罹って、対応に困っておられることも少なくありません。

 治療は、まず安静と抗生物質の飲み薬です。症状が軽ければ3日ほど飲み続ければ治るものですが、ひどい場合には点滴治療や入院が必要になることもあります。いちど智歯周囲炎になると何度も繰り返すことが多く、また手前にある歯の虫歯や歯周病の原因となることもあるので、抜歯することがすすめられます。

 特に下顎の智歯の抜歯は難しく、歯肉を切って骨を削りながら抜歯することもあります。術後の合併症の頻度も他の歯の抜歯より高いことが知られています。

 主な合併症として、抜歯後の出血、感染、疼くような痛み、舌の神経麻痺、そして下歯槽(かしそう)神経麻痺などがあります。このうち下歯槽神経麻痺は、下唇(したくちびる)や顎の知覚麻痺が長期間、時には一生続くもので、およそ1000人に1人の確率で起こる合併症です。

 ただ最近の治療では、歯科用CTを撮影して智歯の根っこと下歯槽神経の位置関係を確認して、抜歯後に知覚麻痺が発生するリスクを事前にある程度予測できるようになりました。

 智歯周囲炎を起こしたことがある人、成人になっても智歯が生えてこない人などは、一度かかりつけの歯科医院でエックス線検査をして、智歯の状態を調べたほうがよいでしょう。もし抜歯が難しいケースでは、かかりつけ歯科医から大きな病院の歯科口腔外科を紹介してもらいましょう。

2022年 2022年 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年
※健康情報テレホンサービス内検索です。