兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2014年5月

【木曜】 肺炎球菌ワクチンの効用

 医学界の常識が、世間では全く知られていないことがたくさんあります。ワクチンがその典型例です。

 10年前まで、世界の中で日本がワクチン後進国だということは、一般の人たちにはあまり知られていませんでした。小児科医等が懸命に、接種できるワクチンの種類を増やすよう行政に訴えてきたのですが、なかなか受け入れられませんでした。予算のことや副反応が問題だったのです。

 しかし5年程前に、状況が大きく変わりました。きっかけは、ポリオの生ワクチンでした。母親たちが生ワクチンの危険性を知り、「不活化ワクチン」と呼ばれる安全なものを早期に導入するよう訴えたのです。これには、行政も動かざるを得ませんでした。改めて、世論の力の大きさに驚かされます。

 小児用のワクチンと成人用のワクチンは接種方法が異なります。詳しいお話は省きますが、乳幼児は免疫が未熟なために異なっていると、覚えておきましょう。

 以後、次々に新しいワクチンが承認され、ワクチンの定期接種が行われています。その中の1つが、成人用の肺炎球菌ワクチンです。

 2014年の秋から、65歳以上の方に対する肺炎球菌ワクチンが定期ワクチンとして承認されます。がん、心疾患、そして脳卒中が老人の三大死亡原因として有名ですが、実は、最終的な死亡原因としては肺炎が最も多く、特に口の中に常在している肺炎球菌を誤嚥する方も少なくありません。

 ある事例をお話します。

 脳卒中の後遺症で治療中の80歳代の男性が、ある日、転倒して大腿骨を骨折してしまいました。すぐに救急搬送され手術も成功したのですが、病院の回復室で嘔吐して、誤嚥性肺炎を起こしてしまいました。奥さんは、主治医から「ご主人が厳しい状況だ」との説明を受けました、しかし、男性は肺炎球菌ワクチンを事前に接種していたため、奇跡的に回復したのです。退院後、奥さんから「あの時ワクチンを打っていなかったら、主人は助かっていなかったと思います」と、たいへん感謝されました。

 この例からも分かるように、成人の肺炎球菌ワクチンはたいへん有効です。ぜひ接種して自分を守っていただきたいと思います。

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