兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2015年8月

【水曜】 便に血が混じる病気―潰瘍性大腸炎―

 サラリーマンのA氏の話です。

 最近、排便のとき便に血が混ざるように思う。肛門の痛みはないので、多分、痔が出来ているのだろう。薬局で座薬を買ってみようか、2~3日座薬を入れれば良くなるだろう、と自己診断していた。その後1か月経って、見た目には出血は判らなくなってきた。

 ところが、会社の検診では便鮮血検査が陽性に出て、精密検査を受けるように通知がきた。今は忙しいから暇になったら行けばいいと、また自己判断。半年~1年、時々肛門から粘液が出たり、腹痛があったり、軽い発熱があったり、体重も少し減ってきた。最初に便に血が混じってからほぼ1年が経っていた。疲れやすく、食欲もあまりなく、顔色も悪くなっている。

 やっと内科を受診して、大腸カメラの検査を受けた。その結果は、肛門直上から直腸にかけて、粘膜はただれて真っ赤になっていた。しみだすような出血が広範囲に見られた。粘膜は剥げ落ちて潰瘍が多数散在していた。組織検査の結果は「潰瘍性大腸炎」という病気の活動期だった、ということでした。

 潰瘍性大腸炎は国の定める指定難病疾患で、炎症性腸疾患の一つです。国内には13万人以上の届出がある原因不明の難病です。

 内科の専門外来で飲み薬による治療ができますが、出血がひどい場合は外科手術で大腸を全部切除します。がんを合併することもあり、一生にわたって慎重な経過観察が必要です。

 炎症性腸疾患には、これ以外に、消化管のあちこちが狭くなり、腸閉塞をくりかえす「クロ一ン病」があります。全国で3万人の方が治療を受けています。これら炎症性腸疾患の原因は未だ不明です。新薬も開発され劇的に改善する方もいますが、定期的な検査を要します。

 さて、便に血が混じる病気には大腸がん、ポリープ、憩室炎、虚血性腸炎、放射線腸炎など、まだ色々あります。

 便鮮血反応が陽性だった方で、実際に大腸がんが見つかる割合は3%前後と言われます。つまり、がんが存在していても便鮮血反応が陰性の人はたくさんいます。心配なら、やはり大腸カメラで確認するのが最善です。カメラ以外の画像診断もいろいろあります。がんに反応する血液検査や遺伝子検査も次々研究開発されていますが、実際に腸管内を観察するのが確実です。大腸検査のための術前の食事や、腸管洗浄液もよくなっています。

 一人で判断せずに思い切って診察を受けましょう。健康はご自身のため、家族のためです。

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