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健康情報テレホンサービス

2016年9月

【水曜】 顔面神経麻痺

 顔の筋肉が動かなくなる顔面神経麻痺は、脳梗塞などの脳自体の障害による「中枢性顔面神経麻痺」と末梢神経の障害による「末梢性顔面神経麻痺」に分けられます。中枢性では顔面麻痺の同じ側の手足の麻痺を伴うことが多いですが、末梢性では顔面のみの麻痺となります。今回は後者の「末梢性顔面神経麻痺」、いわゆるベル麻痺を取り上げます。

 末梢性顔面神経麻痺は、顔面神経が炎症をおこして腫れるために、神経が圧迫されて片側の顔全体に運動麻痺が起こります。そのために、片側の額のしわ寄せができない、片目が閉じない、片方の口の端から空気が漏れるなどの症状をきたします。原因としては単純ヘルペスウイルスにより引き起こされたと考えられるようになってきました。人口10万人あたり年間20~30名に発病しますが、一般に予後は良好で無治療でも70%以上は後遺症なく治ります。ただし耳のまわりの水疱を伴って顔面神経麻痺が生じた場合は、より重症で後遺症をきたしやすくなります。

 治療には急性期は神経の腫れをとるために10日から2週間程度、副腎皮質ステロイド剤が用いられます。中等症以上の麻痺の場合はヘルペスウイルスに対する抗ウイルス剤の併用が考慮されます。その後は神経の修復に役立つと考えられるビタミンB12製剤などが用いられます。鏡を見ながら自分で顔面の各部位を意識的に動かす訓練(バイオフィードバック訓練)も行われます。不用意に低周波電気刺激療法を行ったり、大きく顔を動かすような強い運動を行なうと顔の神経が間違って配線されてしまい、口を動かすと目が閉じるなどの病的共同運動のきっかけになることがあります。他にも星状神経節ブロックや高圧酸素療法、鍼灸などが行なわれることがありますが、いずれも明らかな有効性を示すデータは乏しいのが現状です。

 麻痺症状が軽度から中等度ではほとんどは数ヶ月以内に治りますので焦らずに治療に取り組む必要があります。全く顔面筋が動かないような重度の場合では、後遺症の程度によっては手術で神経をつないだり、反対側の顔面神経の移植が行なわれることがあります。

 顔の動きがおかしいと感じたら顔面神経麻痺の可能性がありますので、かかりつけの医師に相談の上、神経内科、耳鼻科や脳外科の専門医に診てもらってください。 

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