兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2016年10月

【火曜】 地域包括ケアシステムとは

 みなさんは「地域包括ケアシステム」という言葉をご存知ですか。これは2003年に厚労省が提唱したもので、現在では「地域ごとの医療・介護・予防・生活支援・住まいの継続的で包括的なネットワーク」といわれています。具体的な例で考えてみましょう。ある高齢者が脳梗塞で倒れたとします。この方は近くの病院に救急車で運ばれ、緊急処置をうけます。その後、後遺症は残ったものの症状が安定したので、退院し、在宅で療養を行います。この際、この方の医学的な対応は病院から地域のかかりつけ医に引き継がれます。一方、介護認定を受けて、後遺症を悪化させないために施設でリハビリテーションや、ヘルパーさんによる生活援助をうけます。その後、数年がたち高齢でもあり、徐々に在宅での生活が難しくなります。そこで、住み慣れた地域の介護施設に入所することになります。このように「地域包括ケアシステム」とは住み慣れた地域で、特に自宅を中心にその方の病気や介護度などに応じて入院や在宅医療、訪問介護や施設介護が適切に継ぎ目なく提供される体制のことを指しています。

 これを聞いてみなさんは「素晴らしい」とお思いでしょう。確かにこうした体制ができれば安心して老後を過ごすことができます。

 しかし、政府の思惑は別のところにあります。それは国が支払う医療費など社会保障費の抑制です。今後高齢化がさらに進む中で、これまでのように高齢者が長い間、病院に入院したり、特別養護老人ホームに入所したりすれば社会保障費がかさんでしまうので、なるべく自宅で在宅医療や訪問介護を受けてもらおうというのです。実際に政府は団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて病院のベッドを20万減らして30万人を新たに在宅医療で診る計画を立てています。

 保険医協会は政府のように社会保障費を削減するためでなく、本当に高齢者がご自身の状態に合わせて住み慣れた地域で過ごせるように本当の「地域包括ケア」をつくっていく必要があると考えています。そのためには、何かあった時にすぐに入院させてくれる病院も必要ですし、十分な数の介護施設も必要です。さらに救急医療や在宅医療に取り組む医師の数も増やさなければなりません。国が十分なお金をかけて、患者さん本位の「地域包括ケア」をつくっていくべきです。

      

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