兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2022年2月

【木曜】 大動脈解離

 大動脈は心臓から全身へ血液を送る動脈の本幹です。

 体の中で最も太い血管で、その壁の構造は内膜、中膜、外膜の三層で構成されています。

「大動脈解離」とは、もろくなった内膜に亀裂が入り、ここから大動脈を流れる血流が中膜内に流れ込むことで血管の壁が裂けることです。

原因は不明ですが、その多くは動脈硬化や高血圧が関係していると考えられています。

また、遺伝的に血管が脆い体質が原因である場合もあります。

この病気は何の前触れもなく突然起こり、血管壁が裂けることにより激しい痛みを感じます。「過去に経験したことのないような」と、表現される位の激痛が胸部から背中に突然生じることが特徴の症状です。

 解離した動脈の一番外側の血管壁は、ほぼ外膜だけの一層構造となるため、圧力に弱く容易に拡大し破裂する危険性が高くなります。

 以前に「解離性大動脈瘤」と呼ばれていた時期がありましたが、これは解離により血管が動脈瘤のように拡大するためです。しかし、発病直後は明らかな拡大がみられないため、現在では「大動脈解離」と呼ぶのが一般的です。

 血管が破れることで、死亡につながります。発病後短時間で破裂することが多く、日本では発病後24時間以内に93%の患者さんが死亡したとの報告があります。

病気の診断は、胸部エックス線検査やCT検査、心臓超音波検査等により行います。

 救命するには緊急手術が必要となり、解離した動脈を人工の血管に置き換える人工血管置換術が基本です。解離した部位によっては、集中治療室で薬を使って厳重に血圧を下げる治療を優先することがあります。

 治療成績は近年では良好ですが、病院到着前にすでに80%の患者さんが死亡する怖い病気ですので、なによりも予防することが第一です。

 発病した患者さんの多くに高血圧がみられることから、高血圧の治療がとても重要です。

 万一、胸部や背中に「過去に経験したことのないような」激痛を感じたら、ためらわず速やかに救急車を呼んでください。

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