兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

健康情報テレホンサービス

2022年9月

【金土日】アトピー性皮膚炎の新しい治療法

 アトピー性皮膚炎は、悪くなったり、良くなったりの状態を繰り返し、痒みを伴う皮膚の炎症です。この皮膚炎は、①表皮バリア機能の異常 ②免疫の異常 ③痒みの異常の3つの異常を基礎として、多くの免疫細胞やそこから出るサイトカインという蛋白質とが絡み合って、起こります。①の表皮バリア機能の異常により皮膚が乾燥し、②の免疫異常を起こす外から様々の物質が入り込みます。例えば、ダニの死骸や糞、或いは家のほこりなどです。

 その結果、皮膚炎が起こり、痒みの異常が起こり、その痒みを繰り返して、皮膚炎がますますひどくなります。この治療は、最近までステロイド軟膏と、非ステロイドのタクロリムス軟膏、およびシクロスポリンという飲み薬しかありませんでした。しかしここ数年、塗り薬、飲み薬や皮下注射の新しい薬が、発売されました。まずサイトカインによる刺激が細胞に入る時に必要な酵素を阻止して、炎症を防ぐ塗り薬や飲み薬が新しく処方ができるようになりました。その他、最も新しく発売された塗り薬として、サイトカインなどが増えるのを防ぐ塗り薬も発売されました。タクロリムス以外の2種類の非ステロイド軟膏に関しては、塗った時の刺激がより少なくなっており、顔にはつけやすくなって、痒みに対する効果があります。飲み薬は2、3種類が発売されました。1日1回の飲み薬ですぐに効果が現われます。ただし、結核や肝炎ウイルスへの感染症がある人は、これらの症状が酷くなる可能性があるので、まず内科などに罹ってもらい、レントゲンなどの検査を受けてもらう必要があります。これに対して、皮下注射の薬はそういう検査の必要は無く、自己注射も可能で、2週間もしくは4週間投与で、副作用も結膜炎以外は、少ないことが分かっています。また、飲み薬も注射薬も、塗り薬を続けることが必要です。ただ、この飲み薬も注射も1錠や1本が約12万円と非常に高く、このことが、患者さんにとっては迷うところなのですが、実際にこれらを処方された患者さんは、嘘のように痒みが止まって、人生が変わったと言われる方が多いです。これらの薬に関しては、いわゆる「高額医療費制度」が適応されますので、自己負担はかなり抑えられます。是非、皮膚科専門医にご相談ください。これからもアトピー性皮膚炎の治療薬はどんどん新しく開発されてきます。アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、福音になる事が期待できると思います。

2022年 2022年 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年
※健康情報テレホンサービス内検索です。