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健康情報テレホンサービス

2023年10月

【水曜】痔瘻について

 皆さんは痔瘻という病気をご存じですか。昔から、「あな痔」ともいいます。肛門周囲の皮膚に小さな穴があり、そこから分泌物がずっと出ます。このため、下着がいつも汚れてしまう非常に不愉快な状態が続きます。これが一般的な痔瘻の症状です。

 痔瘻のはじまりは、肛門が急に痛くなり肛門周囲が化膿する、肛門周囲膿瘍がほとんどです。肛門から少し奥へ入ったところに肛門腺というくぼみがあり、このくぼみに細菌が感染し化膿します。そこから便が侵入して、肛門周囲の組織を破壊し、膿が広がる通路を形成します。これが肛門周囲の皮膚に到達し破れたり、切開して膿を出す穴が開くと、痔瘻となります。この通路を通って膿や便が外へ出てきます。

 肛門周囲膿瘍になり、切開排膿をした方の半数程は痔瘻になると言われています。切開排膿を受けてから2週間~3週間経過しても切開孔がふさがらない人は、痔瘻になっている可能性が高く、痔瘻の根治手術の対象となります。痔瘻の治療は手術です。手術は痔瘻のパイプを開く方法、くり抜く方法、パイプに紐を通して徐々に縛っていく方法などがあります。痔瘻は原則、入院で治療する方が良いです。

 痔瘻には肛門周囲の浅い所に出来る痔瘻と、深い部分を通過する痔瘻があります。痔瘻の大半は浅い痔瘻で、深い痔瘻は全体の30%程とされます。浅い痔瘻の場合は手術で完治します。深い痔瘻には治癒しにくい物もあります。深い痔瘻の治療は難しく、根本的には昔と治療法はあまり変わっていません。

 分泌物がずっと出ている痔瘻を放置してはいけません。ごく稀ですが、痔瘻癌が発生します。透明なゼリー状の分泌物が出てきたら要注意です。専門医での診察、組織検査が必要なので、充分に注意してください。

 肛門周囲膿瘍の他に、炎症性の腸の病気に合併する痔瘻もあります。大腸粘膜がただれて出血する潰瘍性大腸炎、すべての消化管に潰瘍や狭窄を起こすクローン病といった、難治性腸疾患に合併する痔瘻は、免疫化学療法という治療で軽快することはありますが、完全治癒しません。

 肛門周囲から分泌物が続く方、再発を繰り返す方は、早めに肛門専門医を受診するようお願いします。

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