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健康情報テレホンサービス

2023年11月

【金曜】一過性健忘症について

 健忘とは「よくものを忘れること、忘れっぽいこと」です。

 一過性健忘症とは、ある時間の記憶がすっぽり抜け落ちている症状です。一過性健忘症の原因として多い病気は、てんかん発作と一過性全健忘です。

 一般的なてんかん発作では意識を失い、倒れてけいれんを伴うことが多く、だれが見てもてんかん発作とわかります。高齢者のてんかん発作では、急に動作が止まる、口をモグモグする、意味のない動作を繰り返すなど、てんかんとは気づかない発作のことがあります。発作の間の記憶はありません。

 高齢者てんかんの原因としては、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、ついでアルツハイマー型認知症などの変性疾患が多いとされています。70歳を過ぎるとこのような疾患が増え、てんかん発作の危険も増えていきます。高齢者施設では10人に1人がてんかんを有するとのデータもあります。

 そのため、医師がてんかんを念頭において診察しなければ、発作の症状を見逃したり、一過性健忘症を認知症と誤診することもあります。

 てんかんは「脳の神経細胞の異常な活動」が原因の一時的な症状を言います。脳波で脳の電気活動に異常が見つかれば診断は確実です。幸い、高齢者のてんかん発作は抗てんかん薬がよく効きます。見逃さないことが大事です。

 一過性全健忘は短期記憶だけが一時的に障害されます。倒れたり、けいれんを伴うことはありません。歩いたり、話をすることもできます。一見、普段と変わりませんが短期記憶が一時的に障害されるために、発作の間は認知症の様に同じことを訊いたり、話したりします。

 一過性全健忘の多くは数時間で完全に元に戻り、再発を繰り返すことは少ないとされています。原因はまだよくわかっていません。脳波、MRIなどでも異常がありません。

 てんかん発作と一過性全健忘の他にも、低血圧で失神する場合や、低血糖が一過性健忘症の原因となることもありえます。降圧剤、血糖降下剤などのお薬の確認も必要です。サッカーやラグビーなどで頭を強く打って脳振盪を起こした場合も一過性健忘症となることがあります。

 気になることがあれば、お早めにお近くの脳神経内科を受診しましょう。

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