兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2023年12月

【木曜】C型肝炎治療の進歩

 日本では1992年に、C型慢性肝炎に対して、インターフェロンという注射薬の単独療法が保険適用されました。C型肝炎にはウイルスの遺伝子型により複数のタイプがあり、日本では1型が80%、2型が20%となっています。20世紀中は難治型である1型に対して、インターフェロン治療のみでは、治療終了後もウイルスが持続的に陰性化するのは10%未満でした。

 2001年にリバビリンという飲み薬とインターフェロンの併用療法が保険適用され、ウイルスの持続陰性率は20-30%になりました。さらに、2005年からはリバビリンとペグインターフェロン(PEG-IFN)という注射薬を24週併用する治療によって、持続陰性率は50%前後と進歩してきました。また、2型については、ペグインターフェロンとリバビリンの24週投与で持続陰性率は80%でした。

 2011年以降には、経口の抗ウイルス剤の一つであるテラビックが、ペグインターフェロンおよびリバビリンとの併用で保険適用され、持続陰性率は1型で70~80%と向上しました。

 2014年からは1型に対して、インターフェロンを用いない経口の抗ウイルス剤であるスンベプラとダクルインザという薬が、日本から世界に先駆けて保険適用となりました。この2剤を24週併用し、持続陰性率は85%以上になりました。2型については、2015年6月に保険適用となったソバルディーという飲み薬とリバビリンを12週投与し、持続陰性率は90%以上に上昇しました。

 2023年現在、インターフェロンを用いない抗ウイルス薬の飲み薬であるマヴィレットと、エプクルーサの併用により、持続陰性率は、1型、2型ともほぼ95%以上となっています。この治療では、インターフェロンによる様々な副作用は顕著に減少し、高齢者や腎機能障害、貧血、また症状が現れる程悪化した肝硬変の方でも適用できるようになりました。ウイルスの陰性化により、肝機能などの改善を得ることができます。ただし、ウイルスが陰性化した場合でも肝臓癌になることもあります。特に肝硬変では、がんの新規発生が、1年で6.6%、2年で11.9%、3年で14.5%と少なくありません。注意深い経過観察が必要です。

 C型肝炎の治療の進歩を受けて、WHOは「2030年までにC型肝炎を撲滅することを目標とする」というメッセージを出しています。日本では、C型肝炎の推定患者数は2000年時点で170-220万人でしたが、2015年の時点では、治療中、経過観察は70万人、未診断が推定20万人、診断後未受診が1万人から40万人と推定され、未診断と診断後未受診の方への対策が急務になっています。

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