2024年10月
【金曜】疥癬
疥癬はヒゼンダニと呼ばれる体調0.2mm~0.4mmの小さなダニが皮膚表面の角質層に寄生して起こる感染症です。血を吸うダニではないので、ヒゼンダニそのものや糞などに対するアレルギー反応で皮膚炎を生じます。人の肌と肌との接触によってうつるため、高齢者施設での介護や医療機関での看護やリハビリ、乳幼児では家族との肌の接触や、保育園での寝具の共有などで感染します。
ヒゼンダニは人体から離れても24時間くらいは生きていますので、疥癬患者さんの使用した寝具や入浴施設の脱衣カゴなどでも感染は起こります。
疥癬の皮膚症状はヒゼンダニの成分に対するアレルギー反応のため、感染後4~6週間経ってからあらわれる痒み、小さな赤いブツブツや小さな水疱です。無症状の期間があるため感染に気づいていないことが多く、特に高齢者では痒みを訴えないこともありますので、高齢者を介護する方々は、常に皮膚症状に注意する必要があります。
ヒゼンダニのメスの成虫は、皮膚の角質層に潜り込んで長さ数mm~1cmの疥癬トンネルと呼ばれる場所を作ってその中で卵を産み、卵は2週間で成虫になります。この疥癬トンネルは手首、てのひら、指の間で見つけやすく診断の決め手になります。
病気のタイプとしては、ダニの寄生数の少ない「通常疥癬」と、寄生数が100~200万の「角化型疥癬」に分けられ、中間型もあります。角化型疥癬は、高齢者や免疫の低下した人に発症し、手足の角質の増殖が激しく、多数のヒゼンダニが皮膚から脱落するため非常に感染力が強く、肌の接触がなくても感染しますので注意が必要です。
治療はフェノトリンという液体の塗り薬を全身に塗って12時間以上経ってから入浴して洗い流す方法と、イベルメクチンというお薬を内服する方法があります。治療をきちんと行えばダニは死滅しますが、ダニの成分に対するアレルギー反応は残り、痒みが2ヶ月くらい続く場合があります。
予防としては、通常疥癬なら寝具の共有や肌と肌との接触を避けるだけでよいのですが、角化型の場合は個室に隔離することになります。疥癬患者さんと接触があった人は、感染していると考えて予防的に治療する必要があります。
少しでも疥癬の可能性が考えられるときは早めに皮膚科を受診してください。