2025年5月
【火曜】盲腸(急性虫垂炎)について
皆さんが「盲腸にかかり手術を受けた」などと言う「盲腸」とは「急性虫垂炎」という病気です。盲腸は大腸の始まりの部分です。その端から突き出た虫垂という、「細えんぴつ」程度の太さで長さ約5㎝ほどの腸管に、悪玉細菌、いわゆる「ばい菌」がとりついて膿んで腫れている状態を指します。
細菌により膿んでいる状態なので、放置していると次第に悪化して腹全体が細菌で侵される細菌性腹膜炎という状態になり、ひいては全身の感染症となって死に至る事もある病気です。
原因は様々ありますが多くは虫垂の中が食物の種などの異物や固くなった便、腫瘍などで詰まることにより、細菌が入り込んで感染が引き起こされる状態です。
症状は右下腹部の痛みが有名ですが、いきなり右下腹部の痛みが出るのではなく、はじめ胃の辺りにむかつき・吐き気や痛みを感じ、次第に右下腹部に痛みが移っていくことが多く見られます。虫垂が膿んでいる状態ですので痛みはおなかを壊して下痢しているときの様な、出たり消えたりするものではなく、和らぐことのない持続的な痛みである事が多いです。悪化して腹膜炎状態になると、歩くと右下腹部に響くような痛みになったり、発熱が起こることもありますので要注意です。
治療は手術で膿んだ虫垂を摘出することが基本ですが、状態が軽ければ、細菌を退治する抗生剤投与で治癒する事もあります。
急性虫垂炎と間違われやすい病気の一つに「大腸憩室炎(けいしつえん)」というものがあります。高齢化や慢性便秘などによって大腸の壁の一部に小さな「憩室」と言うくぼみが出来て、そこに便などが入り込み膿んでくる事で炎症が起こる状態です。この憩室は右や左下腹部の大腸にできやすく、右下腹部の大腸で憩室炎が発生すると虫垂との鑑別が問題となる事があります。どちらも持続的な痛みは同じですが、憩室炎は虫垂炎と違って始めから右下腹部の痛みで出現し、吐き気などの胃症状を伴うことは少ないです。右下腹部の痛みで診察を受ける際には、過去の検査で大腸憩室の存在を指摘された事のある方は、その旨を医師に伝えるようにしてください。