2025年6月
【火曜】義歯もメンテナンス
1989年より厚生労働省と日本歯科医師会は、「80歳で20本歯を残そう」という「8020運動」を推進してきました。2022年度の歯科疾患実態調査によれば、8020達成者は51.6%でしたが、その一方で入れ歯を使用する患者さんも増加傾向にあります。
入れ歯は歯の型採り(かたどり)から始まり、上下のかみ合わせを確認し、人工の歯を並べ、装着して入れ歯と歯茎の調和の調整、と数々のステップを踏んでご自身の身体の一部となります。そのやっと馴染んだ入れ歯、お使いのみなさんはこれでもう通院しなくてよい、治療終了と思っていませんか? 歯が揃っている方が虫歯や歯周病予防のため定期検診を受けるように、上下総入れ歯の方でも、入れ歯の定期検診が必要です。
入れ歯は毎日使う非常に大切な身体の一部ですから、定期点検は必要です。
まず、ご自身によるセルフケアとしては、日々の食後の入れ歯の掃除は欠かせません。硬すぎないブラシを使って、水を流した状態で汚れを洗い流してください。その際、歯磨き粉には研磨剤が含まれており、入れ歯が削れる恐れがあるので使わないでください。
そして毎日、入れ歯洗浄剤を使いましょう。汚れを取っておかないと微生物が増えたり、口腔カンジタ症などを起こすことがあります。外して保管する時は必ず水に浸けておきましょう。
また定期的に歯科医院で不具合が無いか診てもらいましょう。ブラシや洗浄剤でも落ちない汚れのクリーニング、破損や人工歯が抜けた場合などの修理が必要です。また、外傷や虫歯・歯周病の進行などで新たに抜歯した場合は、入れ歯に新たに人工歯を追加しなければなりません。
入れ歯の真下の歯茎や土手の部分の形が変化し、食物が詰まりやすくなった場合も治療が必要です。噛み癖や噛み合わせなどにより擦り減った人工歯を元の状態に治すことも必要です。日頃、特に不都合なことが無くても、定期的に診てもらい、不具合が起こる前に修繕してもらうことが大切です。
そうすることによって、入れ歯が安定した状態が長く保たれ、快適な毎日の維持に繋がります。
ちなみに自費で作られた入れ歯、例えば金属床(きんぞくしょう)や金属の人工歯、特殊な維持装置など、保険適応ではない材質でもメンテナンスが必要なことには変わりありません。
人生100年時代を見据えて今後増々、入れ歯を使用される方々は増えていくと思われます。患者さんのQOL向上のためにも定期的に歯科医院に診てもらうことをお勧めいたします。