2025年9月
【水曜】偽痛風
痛風(つうふう)という名前は多くの方が一度は聞いたことのある名前だと思います。けれども、偽痛風(ぎつうふう)を知っている方はあまり多くないでしょう。
珍しい病気です。頭に付いた「偽」という字は、「にせもの」の意味です。「偽痛風」は、その名前の通り、痛風にとてもよく似た症状を呈します。つまり、関節が、ある日突然痛くなって赤く腫れてくる、ということが起こります。
痛風は、原因が尿酸という物質ですが、偽痛風は、ピロリン酸が原因です。足や膝、足の指が急に腫れてきて、風が吹いても痛いほど激痛が走るという症状で病院に行くと、多くの場合医療機関では痛風ではないかと疑って、血液検査とレントゲン撮影を行います。
まず血液検査では、関節炎を示す数値がたいていは高くなります。尿酸値が高い場合には痛風だろうと診断されますが、尿酸値が正常であれば、偽痛風を疑います。次に、腫れている関節のレントゲン検査で、石灰がたまっている状態を確認すれば、これは偽痛風だろうと診断します。さらに、関節にたまった液からピロリン酸の結晶が顕微鏡で確認できれば、確実に診断がつきます。
痛風も偽痛風も、関節周りに原因物質が沈着して発症します。物質が結晶になって沈着するときに、白血球が結晶を異物として激しく攻撃し、猛烈な痛みと腫れと発赤(ほっせき)を誘発します。痛風は足の親ゆびに多く、偽通風は膝関節に多く出るという特徴があります。
ピロリン酸は、もともと体内にある物質が代謝されてできた物質で、害のあるものではありません。けれども、この物質が何かの原因でカルシウムと結合して、結合組織、すなわち関節(かんせつ)軟骨(なんこつ)、半月板(はんげつばん)軟骨(なんこつ)、関節の袋、アキレス腱などに沈着すると、この病を発症させます。
治療方法です。通常の鎮痛剤や冷やす湿布を使い、それで改善しなければ、関節の中にステロイドを入れる方法が効果的です。1週間ほどでよくなることが多いです。早めに治療すれば、手術や入院は必要ありません。結合組織にたまったピロリン酸を除去する方法はありませんが、関節痛という発作をおこさなければ、そのままにして日常生活を送ることができます。いずれにしても、関節炎が起こって心配なときは、一人で悩まないで専門医にご相談ください。