2025年9月
【火曜】斜視
斜視とは、両方の眼の視線が別の方向を見ている状態で、片方の眼が内側か外側、あるいは上や下に偏っていることです。
ある統計によると、日本人の50人に1人程度が患っていると推計され、「国民病の一つ」として指摘されています。原因としては遺伝という説もありますが、はっきりとはわかっていません。その他に強度の近視や遠視、あるいは片眼の失明、乳幼児期の弱視などで眼の筋肉のバランスが崩れてしまうこともあります。また、外傷や脳の疾患によることもあります。
症状としては、左右の眼がそれぞれ異なる方向を向いていることによる美容的なデメリットのほか、両眼視差(左右の視え方の違い)によって立体視(遠近感の獲得)が困難になる、あるいは見ている像が二つに見える複視が生じることもあります。
子供の斜視は放置すると弱視に陥ることもあるので、早期発見・早期治療が大切です。外見上、目つきが異常なために、いじめや差別、あるいは人の眼をまっすぐに見られないなど、対人恐怖症やコミュニケーション障害になることもあります。また両眼(りょうがん)視(し)機能、遠近感が乏しいことによって、日常生活上の支障、坂道や階段を踏み外すなどの危険性もあります。
斜視の治療は眼鏡やコンタクトレンズなど屈折矯正、種々の視標(しひょう)や道具を用いた機能訓練、さらには手術治療などがあります。
幼少時によくみられる調節性内斜視は両眼の遠視が強いためにおこる内斜視で、治療としては眼鏡やコンタクトレンズの装着になります。斜視がかなり改善され全く治ることもあります。斜視の種類によってはプリズムメガネなどを用いることもあります。
手術治療の方法はいろいろあり、目の周りに付いている筋肉、外(がい)眼筋(がんきん)をずらして眼の位置を正常に戻すようにします。小児では全身麻酔、大人では局部麻酔で行う場合が多いです。特に小児の場合は放置すると弱視に陥りやすく、一旦弱視になると、なかなか治療が難しいです。小児の目つきを見ていると、一見斜視のように見えるけど実は正常である「偽斜視」というものもありますが、将来の弱視予防のためにも斜視を疑ったら早めにお近くの眼科を受診してください。