2025年10月
【水曜】手指の粘液嚢腫
指にできる良性の腫瘍の一つに粘液嚢腫というものがあります。比較的よく見られるもので、指の爪の付け根あたりに水ぶくれのようなしこりができるのが特徴です。できる場所は指の第一関節が多く袋の中にはゼリー状の液体が溜まっています。特に爪の根元にできることが多く、指を曲げると少し盛り上がったり、触ると柔らかかったり、少し硬く感じることもあります。大きさは数ミリから1センチ程度で、痛みがない場合がほとんどです。
一般的な水ぶくれとは異なり、自然に破れて治ることはあまりありません。また、中に溜まっている液体は、関節を滑らかにする「関節液」が皮膚の下にもれてきたものです。
粘液嚢腫ができるはっきりとした原因はまだわかっていません。しかし、指の関節の変形が関係していることが多いと考えられています。また、指をよく使う仕事や趣味をお持ちの方、指への負担が大きい方にも見られることがあります。
粘液嚢腫は、基本的に痛みがないことが多いです。そのため、見た目の変化や、服を着替えるときなどに触れて初めて気づく方もいらっしゃいます。
稀に圧迫されたり、炎症を起こしたりすると痛みを感じることがあります。また爪の根元にできると、爪が圧迫されて溝ができたり、変形したりすることもあります。
粘液嚢腫は良性の腫瘍なので、緊急性のある病気ではありません。痛みがない場合や、生活に支障がない場合は、特に治療せずに経過を見ることも少なくありません。自然に小さくなったり、消えてしまったりすることもあります。
しかし、痛みがある場合、爪の変形が著しい場合、見た目が気になる場合は治療をします。多くの場合注射針で穴をあけて中のゼリー状の液体を圧迫して押し出します。針を刺す痛みはありますが、診察室で簡単に短時間で済みます。再発を繰り返す場合は、手術で切除する場合もあります。日帰り手術で局所麻酔ですみますが傷跡が少し残ります。
どの治療法を選択するかは、粘液嚢腫の大きさや症状、患者さんの希望などを考慮して医師が判断します。
気になるしこりが指にできた場合、自己判断せず、皮膚科や整形外科を受診することをおすすめします。特に爪の変形や痛みがある場合は、早めに相談することで適切な治療が受けられます。