兵庫県保険医協会

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審査対策部だより

個別指導における指摘事項(医科)①

2016.02.05

 協会は昨年12月、近畿厚生局兵庫事務所に対し請求していた指導等文書の開示を受けた。そのうち、2014年~2015年にかけて実施された医科の個別指導(新規含む)における主な指摘事項を掲載する(一部要約)。
 個別指導では、「レセプト請求されている診療内容がカルテに記載されているか」という観点からレセプト・カルテの突き合わせが行われ、病名付けの根拠(いわゆるレセプト病名でないか)や医学管理等のカルテ記載の有無などがチェックされる。日頃から、療養担当規則や点数表の通知に基づいた診療内容、カルテ記載であるか留意することが大切である。

※厚生局から個別指導等の連絡通知があった場合は、協会事務局☎078ー393-1803までご相談ください。

 

1.診療録に係る事項
 

・診療録を電子媒体で保存する場合は、厚労省通知「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」により、真正性、見読性、保存性の確保が条件となっているため、適切に運用・管理を行うこと。(例 受付職員2名でID・パスワードを共用しており、診療録記載者の特定が困難であり、真正性が確保されていない)
・診療録様式第1号(1)の1(診療録第1面)について、療養担当規則に定める様式に改めること。(労務不能に関する意見欄、業務災害等に係る記載欄がない、など)
・診療録様式第1号(1)の3(診療の点数等)について、記載すべき事項については全て記載すること。(各診療日の点数について、合計点数の記載はあるが種別ごとの点数の記載がない)
・診療録は保険請求の根拠となるものであるため、必要事項について記載内容の充実を図り、第三者にも判読できるよう丁寧な記載に努めること。(一部院内独自のルールで記載されているものがあり、判読不能なものが見受けられた)
・診療録に記載する傷病名については、部位が判断できるよう適切に記載すること。(例: 湿疹、神経障害性疼痛、帯状疱疹など)
・診療録の傷病名が整理されていない傾向があるので、その都度終了年月日および転帰を記載し傷病名を整理すること。特に急性期病名や疑い病名が長期にわたり継続していることは不自然であるので留意すること。
・診療録に記載する傷病名は症状名ではなく傷病名を記載すること。(例: 食欲不振、胃痛、外傷後出血など)・疑い病名については、疑うに足る確実な医学的根拠に基づいたものをつけること。
・複数の医師が一人の患者の診療に当たる場合は、診療録への記載の都度、署名または記名押印するなどにより、責任の所在を明確にすること。

2.診療内容に係る事項(傷病名、検査、投薬、注射等)

・診療報酬明細書は、提出前に必ず医師自ら診療録と照合し、記載事項に誤りや不備がないか等について十分に点検を行うこと。(診療録と診療報酬明細書の傷病名や診療開始日の不一致が認められた)
・検査は患者個々の症状・所見に応じて検査の項目を適切に選択し、段階を踏み、セット検査を漫然と反復することなく、適切に行うこと。
・必要性の乏しい検査や健康診断的検査と疑われる事例が認められた。
・投薬・注射における薬剤の使用にあたっては、適応・用法・用量等の薬事法承認事項を遵守すること。
・投薬における薬剤の使用にあたっては、適時治療効果の判定を行い漫然と投与することのないよう注意すること。
・経口と注射の両方が選択可能な場合には、経口投与を第一選択とすること。
・ビタミン剤の投与について、食事の経口摂取が可能であるのに漫然と投与している例が見受けられた。なお、当該ビタミン剤の投与が必要かつ有効と判断した趣旨を具体的に診療録および診療報酬明細書に記載しなければならない。
・外来管理加算は、医師が丁寧な問診と詳細な身体診察を行い、それらの結果を踏まえて患者に対して症状の再確認を行いつつ、症状や療養上の注意点等を懇切丁寧に説明するとともに、患者の療養上の疑問や不安を解消する取り組みを行っている場合に算定すること。算定する場合は、患者からの聴取事項や診察所見の要点を診療録に記載すること。
・特定疾患療養管理料は、厚労大臣の定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行い、管理内容の要点を診療録に記載した場合に算定すること。
・特定薬剤治療管理料は、薬剤の血中濃度、治療計画の要点を診療録に記載した場合に算定すること。
・診療情報提供料(Ⅰ)の算定に当たっては、交付した文書の写しを診療録に添付すること。
・患者等からの電話を受けたのみで投薬をすることは認められない。
・処方せんは、患者または現にその看護にあたっている者に対して交付しなければならない。
・処方せんの交付にあたり、特定の薬局に誘導していることが疑われかねない取り扱いが見受けられた。

(3月5日号に続く)