兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

トピックス

トピックス

兵庫県保険医協会第87回評議員会決議

2015.05.17

兵庫県保険医協会第87回評議員会決議
 


 安倍内閣は、社会保障費の削減と消費税増税が避けられないとの考えを国民に押し付け、医療・社会保障改悪をますます強めようとしている。地域医療構想策定における病床削減や、医療から介護、施設から在宅への誘導、国保の県単位化なども、現場の実情をかえりみない医療費の抑制が基本である。
 しかし、国家財政が悪化した原因は、社会保障ではない。主因は税収の低下であり、その最大の要因は法人税率の引き下げと大企業優遇税制である。大企業の内部留保は1年間で46兆円も積み増し、総額は285兆円にも及ぶなど、担税力はきわめて大きい。にもかかわらず、歳入不足の穴埋めを消費税増税と社会保障削減に求めることは、社会保障を弱者同士の助け合いとする国の責任放棄に他ならない。また、安倍内閣はアベノミクスの三本目の矢として、「医療は牽引産業」などとして、国家戦略特区の拡大や混合診療の全面解禁をめざしているが、これは国民皆保険を空洞化させるものであり、断じて許されない。
 アベノミクスは、円安と株高で一部の大企業や富裕層が儲けただけで、勤労者の実質賃金は低下し続け、格差は広がっている。大企業や富裕層を優遇すれば、社会全体に富が行き渡るというトリクルダウン理論はまやかしであり、国民生活は悪化し続けている。この中で、患者は病気になってもすぐには受診せず、受診しても検査を先送りし、薬の長期投薬を希望したり、あるいは薬の服用回数を減らすなど、様々な形で受診抑制が強まり弊害が広がっていることを、我々は日常診療の中で実感している。
 安倍内閣は「我が軍」発言にみられるように、集団的自衛権の行使容認をはじめ、特定秘密保護法の制定、安保法制の整備など、「積極的平和主義」の名を借りて、自衛隊を他国の戦争に参加できる軍隊へと変質させようとしている。また戦後70年間、日米安保体制の犠牲にされ続けてきた沖縄県に対して、普天間から辺野古へと、米軍基地押しつけを継続しようとしている。安倍内閣は、「戦後レジュームからの脱却」「美しい日本をとりもどす」というが、沖縄県の米軍基地問題こそ、あらためるべきである。我々は、沖縄県保険医協会と県民の運動に連帯し、我々自身の問題として強く支援するものである。
 また、国民の命と財産を守る国家の責務として、二つの大震災と福島原発事故を教訓にすること、すなわち被災者の生活再建を最優先にし、原発は再稼働ではなく廃炉をめざすことを強く求める。
 先の統一地方選挙で、投票率が各地で戦後最低を更新するほど政治不信の高まりが指摘されている。しかし、患者負担軽減や診療報酬改定など、我々が取り組んだ運動によって、在宅点数の運用改善や、子どもの医療費無料化が県下30市町にまで拡大するなどの成果をつくりだしていることを忘れてはならない。
 我々は、患者・住民とともに、社会保障の担い手として、憲法が輝く国づくりをめざして引き続き全力で奮闘する決意である。

一、患者負担増計画をやめること。子どもの医療費は中学3年生まで窓口負担を無料にすること。
一、消費税の10%増税を中止し、医療にはゼロ税率を導入して消費税を還付すること。
一、保険でより良い歯科医療を実現するため、保険適用の範囲を拡大すること。
一、高すぎる国保保険料を引下げ、短期保険証や資格証明書の発行をやめ、不当な差押さえを行わないこと。
一、TPP交渉から撤退し、「患者申出療養」を混合診療全面解禁の突破口にしないこと。
一、「特区制度」を利用した医療の営利化を進めないこと。
一、東日本大震災被災者への支援を抜本的に強め、被災医療機関の再建に公的支援をおこなうこと。
一、停止している原発の再稼働を行わず、「エネルギー基本計画」は「原発ゼロ」を基本にすること。
一、沖縄・普天間基地の辺野古移転計画を中止し、「国外移転」をアメリカに求めること。
一、集団的自衛権行使容認の閣議決定を取り消し、平和憲法を守り、憲法通りの国づくりをめざすこと。

以上、決議する。

2015年5月17日 兵庫県保険医協会第85回評議員会