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【パブコメ】「四国電力株式会社伊方発電所3号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」への提出文

2015.05.26

2015年5月2日


「四国電力株式会社伊方発電所3号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」への提出文


意見提出者
環境・公害対策部長 森岡 芳雄
反核平和部長 近重 民雄

 われわれは、いのちと健康を守る医師の団体として、下記の点から、本審査書で認められた四国電力伊方原発3号炉の安全性に対し、科学的・技術的に懸念があり、再稼働に反対する。

1.そもそも原発稼働により産出される放射性廃棄物の処理方法が確立していない。

2.原発内に保存される使用済み核燃料の保管状態は福島第原発事故以来、非常に危険性の高いものであることが判明しているが、これについて何ら検討が加えられていない。

3.本審査の基準となる新規制基準そのものが、欧州加圧水型原子炉の安全設備と比較して、(1)安全上重要な系統設備の多重性として、独立した4系統が求められているのに対して2系統しかない、(2)原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留するコアキャッチャーの設置が求められていない、(3)大型商用航空機の衝突に耐え、設計圧力を高めた二重構造の格納容器の設置が必要とされていない、(4)サイバーテロへの防御の検討が不十分である、など審査基準として不十分であり、安全性が保障されたとは、到底言いがたいものである。

4.審査書案では、プルサーマル運転(プルトニウムを混合したMOX燃料を用いた運転)の危険性について十分考慮されていない。MOX燃料はウラン燃料と異なり、燃料が溶融する温度が低く溶融しやすい、制御棒の効きが悪い、臨界に達しやすいなどの危険性があり、安全に対する余裕が削られるにもかかわらず、重大事故対策でMOX燃料を用いた場合の解析がない。

5.「3―1 地震による損傷の防止」で、耐震設計の目安となる基準地震動を、当初より一割強引き上げ、最大650m/s2(650ガル)としたが、引き上げによって必要になった配管の補強など1300カ所の工事は秋まで係る見通しで対応ができていない。その上、2007年の中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発1号機は1699ガルを経験している。伊方原発は敷地の北に日本最大級の断層帯である中央構造断層帯、南に活発で大規模な地震発生源の南海トラフが走っており、地震国日本の原発の中でも大地震に襲われる可能性の高い原発である。この基準地震動はかなり低いと考えられ、問題である。6.福島第一原発事故から、万が一事故が起きたときの避難計画の策定が安全性の確保のためには必須である。まず、避難計画が審査基準の対象から外され、地方自治体任せになっていること自体問題である。さらに、伊方原発は愛媛県の海に突き出た佐田岬半島の付け根にあり、原発事故で放射能が漏れた場合、半島西側の住民約5000人は取り残される恐れがある。県の避難計画では船で県内か対岸の大分県へ向かうとしているが、大地震の際に放射性物質が拡散する中、被ばくせずに避難させる実効性のある安全な避難計画が策定されているとはとても言えない。

7.伊方原発は瀬戸内海に面している。事故で放射能が漏れ、瀬戸内海が汚染された場合、この海域の水の入れ換わりは遅く、数十年以上の長期にわたって汚染され続けることになる。福島第一原発事故と同規模の事故シミュレーションを行い、瀬戸内海の海洋環境への被害予測を策定すべきである。

8.伊方原発では事故発生時、その立地条件から要員の派遣、物資の搬入は困難を極める。また、事故対策施設や発生した汚染水、汚染物質などを一時的貯蔵・保管する場所さえ確保することができない。

9.南海トラフ大地震の際に四国全土にわたる被害が想定され、四国の火力発電所の津波による被災や送電網システムの被災も充分に考えられ、伊方原発への電源喪失が数カ月に及ぶ危険性がある。これに対する検討が一切されていない。

10.再稼働の前提となる、地元同意の根拠となる安全協定を四国電力と結んでいるのは愛媛県と伊方町だけであるが、原発で事故が起こった場合、影響はより広範囲に及ぶ。原発から最短6キロメートルのところに集落がある八幡浜市の大城一郎市長は同市の意向も反映するよう求めている。30㎞県内には大洲市や西予市や内子町なども含まれる。地域内自治体の同意なしの再稼働は認められない。

11.「フィルター付きベント」の設置が猶予されたまま、整備できておらず、設置完了は来年3月になる予定である。