兵庫県保険医協会

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主張 子どものむし歯放置の実態は深刻国と県は調査と対策を!

2017.06.25

 当協会が今年3月に、県下の全小中高校・特別支援学校に対して行った学校歯科治療調査の結果は驚くべきものである。歯科検診で「要受診」と診断を受けた子どもの65%が、治療を受けずに放置していることが分かった。
 未受診の子どもの割合は学年が上がるごとに増え、高校では実に84%となっている。また、1人でむし歯が10本以上あるなど、咀嚼が困難な状態にある、いわゆる「口腔崩壊」といわれる子どもがいる学校は、全体の35.4%にのぼる。
 大阪府歯科保険医協会をはじめ、他府県の協会が過去に行った調査でも同様の結果が見られ、全国的な傾向といえる。子どものむし歯を放置することの悪影響を軽視するわけにはいかない。口腔崩壊の子どもが「口を開けて笑わない」「偏食が多い」など、アンケートへの深刻な書き込みも多数見られる。咬合・咀嚼能力と運動能力に相関があることは、さまざまな研究がなされており、子どもの心身の成長発達に歯の健康は欠かせない。ひいては、高齢期の転倒や認知症の予防にも関連してくると言われている。健康長寿を目指す上でも、子どもの口腔の健康の問題をきちんととらえる必要がある。
 子どものむし歯が近年大幅に減少している中、逆に口腔の健康格差が広がっていることが心配である。口腔崩壊の子どもの家庭状況として「ひとり親」「経済的困難」「無理解」が上位3位を占めている。いずれも背景に、現代的貧困の実相がうかがえる。治療に連れていく時間がない、お金が心配で受診を控える、歯の健康に対するきちんとした知識がないといった要素がからんで口腔崩壊をもたらしていると推測される。
 国や県には、子どものむし歯を「自己責任」として放置せず、調査と対策を求めたい。県下では8割の自治体が中学3年生までの医療費窓口負担の無料化を実施しているが、これを県の制度として高校卒業まで全県に拡充することを求める。高校生の未受診率の異常な高さから考えても急務であろう。母子家庭への貧困対策や、学校における健康教育と受診推進活動の充実も必要である。
 何よりも、貧困・格差社会の是正のため、国の社会保障の拡充が求められる。私たちも運動を強めていきたい。