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【声明】国民の健康を害する恐れのある働き方改革関連法の成立に抗議する

2018.07.14

国民の健康を害する恐れのある

働き方改革関連法の成立に抗議する

  兵庫県保険医協会

第1078回理事会

 2018年6月30日、働き方改革関連法が国会で成立した。

 政府は、「働き方改革」によって、「少子高齢化、生産年齢人口減少」を克服し、生産性向上や労働参加率を向上させ経済成長を促すとしている。しかし、そもそも少子化は、これまで政府が規制緩和の名のもとに雇用を不安定化させ、医療・介護・教育・福祉などの社会保障を削減し、消費税増税を実施し、自己責任を基調とする経済社会をつくって国民の将来不安を拡大させてきた結果である。

 さらに、「働き方改革」によって生産性や労働参加率が上昇することはない。罰則付き残業時間規制は「月100時間未満」「2~6カ月平均で月80時間」と、過労死ラインとされている月80時間を超える残業を容認・合法化するものでしかない。また、「高度プロフェッショナル制度」は、労働時間規制を一切取り払うものであり、労働者が有する労働裁量権の自由を保障しておらず、対象となる業務や年収要件は法律制定後に別途通達などで規定されることになっており、労働者保護法制が全く適用されない事態に陥る可能性を含んだものである。

 今回の働き方改革関連法では、法案作成の根拠となった厚生労働省の『2013年度労働時間等総合実態調査』について、審議の際の野党の追及によりデータの捏造、隠蔽が数々発覚し、その立法事実が破綻していることが明らかになったにもかかわらず、成立が強行されている。

 われわれは命と健康を守る医師として、労働者の健康を害する無制限な長時間労働を認めるこの法律の成立に抗議し、廃止を求める。

 また、本法の医師への適用については5年間猶予し、その間に厚労省の検討会で方向性を定めることとされているが、「高度プロフェッショナル制度」のような長時間労働を、医師について認めるものとならないよう求める。勤務医は、現在でも長時間過重労働を強いられ、各地で勤務医や研修医の過労死が相次いでいる。医師の長時間労働は、医師だけでなく、患者の健康と命を危険にさらす。医師が心身共に健康で、安心して医療が提供できるような働き方の実現が必要である。そのためには、医師の診療、研鑽、研究の必要性を正しく評価し、医師に良心を過重に求めることなく、高齢の医師や女性医師の増加の現実を無視した数合わせに終始することなく、地域別、科別偏在に医師不足の問題を矮小化することなく、本邦医師数の先進諸国並みの増員を図ること、その人員雇用のための医療費増を実施することを求める。