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【声明】日本経済新聞7月18日号「子ども医療費助成どこまで」に強く抗議する

2018.07.28

日本経済新聞社編集局 御中

日本経済新聞7月18日号

「子ども医療費助成どこまで」に強く抗議する

  兵庫県保険医協会

第1079回理事会

 貴社発行の日本経済新聞7月18日付は、「子ども医療費助成どこまで」と題した記事を掲載した。記事は、子ども医療費助成が全国で拡充している現状を伝え、「安易な助成は医療費の膨張に拍車をかける恐れをはらむ」とし、「子育てしやすい環境を長く保つためにも、定額負担や所得制限の導入など、制度全体に自制を効かせる時を迎えているのではないか」と制度の縮小を提案している。

 「医療費の膨張」の根拠として、記事は厚労省の「第4回子どもの医療制度の在り方等に関する検討会」に示された「患者負担を無料化した場合の影響額」から「全国で高校卒業まで無料化すると、自治体の助成がまったくない場合に比べて医療保険の給付費は年8400億円増える」としている。しかし、この試算の根拠となる「長瀬式」は厚生労働省が戦前内務省だったころに考案されたもので、現在ではその有用性に多くの専門家から疑問の声が挙がっている。その点、この影響額は示した厚労省さえも「粗い試算」と断っており、これだけをもって医療給付費が膨張するとの記述はおよそ客観的とは言いがたい。

 実際に子ども医療費助成制度を実施している自治体の調査では、「医療費の膨張」は起きていない。たとえば、2012年から18歳まで所得制限なしで外来・入院の窓口負担を無料にした福島県では、18歳未満の被保険者1人辺りの医療費もほぼ横ばいの費用は増えていないことが明らかになっている(2016年5月26日、社保審医療保険部会・遠藤秀樹日本歯科医師会常務理事)。現在の高すぎる窓口負担は、経済状況の厳しい家庭に受診をためらわせている。弊会が実施した学校歯科治療調査では、歯科受診が必要な子どもの65%が未治療の状態で、口腔崩壊の子どもがいる学校は35.4%にのぼり、その背景には、「ひとり親」や「経済的困難」などの貧困があることが明らかになっている。たとえ医療費が増えようとも、このような子どもの貧困を解消するために、子ども医療費の無料化を進めることは、少子化対策に資するものである。

 自治体が行う子ども医療費助成は、受診抑制による病気の重症化を防いでおり、決して、記事にあるような「安易な助成」ではない。記事にあるように「子育てしやすい環境を長く保つため」求められるのは、医療費助成の縮小ではなく、政府の責任ですべての子どもの医療費窓口負担を無料にすることである。

 貴社には、今後、医療現場の実態に即した公正な報道を求める。