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【反論】日本経済新聞7月12日号 「市販薬あるのに病院処方5000億円」に反論する

2019.07.27

 日本経済新聞は7月12日付1面で、「市販薬あるのに病院処方5000億円」と題した記事を掲載し、「医療費抑制につながる市販薬の利用が広がらない」「一律に保険を使う制度を改め、代えがきかない新薬に財源を振り向ける必要がある」としている。協会は7月27日の第1098回理事会でこの記事に対する反論を採択し、日経新聞に送付した。以下に全文を掲載する。

日本経済新聞社編集局 御中
2019年7月27日
兵庫県保険医協会 
第1098回理事会

日本経済新聞7月12日号 「市販薬あるのに病院処方5000億円」に反論する
 貴社発行の日本経済新聞は7月12日付1面で、「市販薬あるのに病院処方5000億円」と題した記事を掲載し、「医療費抑制につながる市販薬の利用が広がらない」「一律に保険を使う制度を改め、代えがきかない新薬に財源を振り向ける必要がある」としている。
 記事では、医薬品について、市販薬があれば医療費抑制のためにまずは市販薬を使用すべきという前提に立ち、市販薬の使用が進まないのは「処方薬は自己負担が原則3割と安いから」であるとしている。安全性・有効性が確認されれば、保険を適用し、国民が安心して治療を受けられるのが国民皆保険制度であり、保険適用の医薬品の自己負担が低いことは当然のことである。そして、医師が診察した上で、必要と判断した薬剤を処方する。このことによって、早期診断・早期治療を行い、国民の健康が保持されているのである。患者本人が風邪と思っていても、重大な疾患が隠れていることもある。セルフメディケーションを推進し、受診を抑制し、市販薬頼みとなれば、重症化を招く懸念がある。
 また、スイッチOTC薬と処方薬では、同じ成分を含んでいても、含有量や他の成分の違いで、薬効が違うこともある。完全に同じものとして取り扱うのも大きな問題である。
 記事は、市販薬の承認ペースが遅いことも問題視し、「医療に詳しい」調査会社員の「市販品が増えれば病院にくる人が減り、病院経営に響きかねない。あまり広めたくないのが医者の本音」とのコメントを紹介し、「病院に来てもらえば、検査や処置、処方などで幅広く診療報酬を得られるから」市販化が進まないと、あたかも医師が自己の利得のために市販化を進めないかのような描き方をしている。
 本記事は、医師の処方権を侵害し、病院・医療機関での医薬品の処方の原則をはき違え、医療費抑制ありきで国民の健康を害する危険がある非常に危険な内容であり、貴社には本記事の撤回を行い、国民皆保険制度の原則に則した報道を行うよう求める。

以上