兵庫県保険医協会

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声明 日本学術会議会員候補の任命拒否に強く抗議する

2020.10.10

兵庫県保険医協会 第1120回理事会

 菅義偉首相は、日本学術会議が推薦した会員候補6人について任命拒否を行った。拒否された6人の学者はいずれも、安全保障関連法や「共謀罪」法等、政府が成立させた法案に異を唱えていた。菅首相は、「総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と結論を述べるばかりで、その理由を一切説明していないが、日本学術会議の会員は、それぞれの分野において、優れた研究又は業績がある科学者が選考されている。人文・社会科学、自然科学全分野の専門家でない首相に任命の判断は不可能であることから、これらの法案に反対していたことが任命拒否の理由であると受け止めざるをえない。
 日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されている。また、科学者の戦争協力を強く反省し、1950年には、「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明(声明)」を、1967 年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発出した。さらに、2017年には、安倍政権下で作られた軍事技術に応用可能な基礎研究に費用を助成する「安全保障技術研究推進制度」に対し、政府による研究への介入が著しく問題が多いとして、研究の自主性・自立性、公開性の担保に懸念を示していた。このように日本学術会議は、多くの憲法学者が違憲とした、集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法を成立させ、軍事研究を推進し、戦争できる国づくりを進めてきた政府の動きとは独立して、軍事研究に否定的な決意を表明し続けている。 学問の自由は、憲法23条に明記され、解雇等の不利益取扱いの不安なく、真理を探求することができてこそ保障される。今回の任命拒否は、国家権力による学問の自由の侵害であるとともに、政府の姿勢に異を唱える者を排除するもので、国民統制への入り口であり、言論の自由、思想信条の自由の抑制にもつながりかねない。
 日本学術会議には医師、歯科医師の会員も少なくない。社会医学を極め真理を探求する医療・歯科医療の専門家団体として、今回の任命拒否に強く抗議する。
 加えて、先の大戦では、命を守るべき医療者・医学者が戦争に加担してしまった。われわれは医師・歯科医師として、このことを決して忘れず、二度と繰り返さないために、日本国憲法で示された通りの社会を実現することを求める。

以上